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三途から聞かされてこそいたが、Aは随分と街の人々に好かれているようで、ストリートチルドレンと呼ばれる類の少年たちは銃を握った手をぶらりと下げながらAの名を呼び、再会に泣いている奴らもいた。
「孤児、なのか?」
「親がいる子も多いわ。ただドラッグ中毒だったり、子どもに稼がせていたり、皆が訳ありね。最寄りのLKSAも見て見ぬ振りよ」
「……そうか」
イザナが夢見た王国。孤児を集め、王に税金を納めさせ……俺たちがきっと良い国になると信じた、"天竺"。
「有能な奴らを梵天に引き抜く事は、」
「鶴。彼らは既に形成された"ファミリー"なの。力のある子が欠けたら、皆が生き抜けない」
中途半端な情けは有り難迷惑よ。日頃ふわり、穏やかなAが珍しく鋭く言い放った。
まるで俺の考えを見透かしたように。
「……すまない、A」
「いいえ。現実的に、日本語どころか英語も話せない、ネシア語でさえ読み書き出来ない彼らには無理ね。すぐに命を落とすでしょう」
それからマーケットで一通りの買い物を済ませ、一日目が終わった。
Aがノートパソコンを立ち上げ手早く接続し、ボスとビデオ通話を繋ぐ。
「ご飯作って来るから、鶴はマイキーに報告お願い。明日私が一人でドームへ顔出しに行くわ」
おいおい。ボスの一言目なんか想像に容易い、
《A……?》
ほらな。
「俺だ。Aは夕食の支度中、明日ドームに話を付けに出向くそうだ」
《……A呼んで》
「はぁ、待ってくれ……。A、ボスが呼んでるぞ」
「マイキーごめーん!今火使ってて危ないから、後で掛け直すねー!!」
《っ、マイキー!鶴蝶テメーお使いもマトモに出来ねーのか、あ"ァ!?》
マイキーが恐らく何かを破壊し三途が出しゃばって来たところで、仕方ないとノートパソコンをキッチンまで持ち込み、料理中のAを写す。
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作者名:カーター千之助 | 作成日時:2024年3月1日 0時