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正直、生きている可能性はほぼゼロに等しいと思っていた。
ボスじゃないが、王と姫ーーイザナとAを想って眠れない夜もあった。
「……全て捨てた筈だった。何人も殺めた。それでもAと再会してから、ふと孤独に怯える」
惨めで情けない。零した俺に、「そんなものよ」と窓の外に顔を向けたままのAは淡々と返す。
「生い立ちなり、情報としては無限に知る事が出来るわ。でも、その時どう感じたか、今心の底で何を思っているのか、マイキーもハルもココも、蘭と竜胆でさえもわからない。ただ、皆等しく寂しい事だけはわかる。蘭と竜胆はある種互いに依存しているだろうし、ハルはドラッグ、ココは仕事かしらね。そうでもしなきゃ、皆やってらんない。弱いから人間なの」
「……そう、だな。これまでAにとっての支えは何だった？」
「学び。小学校もロクに通っていない私の空っぽの頭に知識や教養を詰め込む作業は、性に合ってたみたい」
ふふ、と笑い、色素の薄い大きな目を俺に向けるAは、例外として"強い"人間なのだろうか。
もしAが"寂しい"時は、何を差し置いても側にいよう。口に出したら粛清ものだが、今の俺にとっての一番はAだから。
数時間後、ヘリがインドネシアはコタに到着した。
三途が「エゲつねー」と話していた通り、これまで訪れた下等地域とは桁違いに荒れた街を、Aの指示に従い無抵抗で歩む。
銃を向けられども、Aが穏便に話を付ければ無事に辿り着いた一軒家。
元々Aが所有していた内の一つらしい。
「あはは！鶴、さっきギャングの集団にビクってしたでしょ」
「……してない。喧嘩屋の血が騒いだだけだ」
「鶴にその愛称が付いたってイザナに聞いた時、悪いけど爆笑したわ」
「A、お前なぁ……！！」
体術じゃ負けねー、軽く仕掛けてやろうと荷物を放り投げAを追い回すも、ケタケタと笑いながら躱される。
隣にイザナがいないだけ、昔と何ら変わらない俺たちの関係。
「夕飯の買い出し行こ。ついでに皆を紹介するわ」
息を整えたAに促されるまま身なりを変え、同じくラフな装いに着替えたAの一歩後ろをついて、ガタガタな道を進んだ。
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作者名：カーター千之助 | 作成日時：2024年3月1日 0時
