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43. 小さな恋と儚い夢 *kkch +? ページ45

※このチャプターには、わかる方にはわかる某漫画のキャラクターがゲスト出演します🤭



 数ヶ月前俺の代わりに三途が出向き、Aと出会ったインドネシアの武器屋との二度目の取引に、今度こそ俺とAで行く運びとなった。最小人数がベターだというAの判断で、それぞれの部下は同行させない。

 煩かったのは三途と灰谷兄弟だ。

 一度赴いた三途は確かに既に現地を知っているがそもそも専門外だし、重傷を負った事を忘れたのだろうか、単にAと観光気分を味わいたいのではないかというのが俺の見解だ。

 ボスに忠誠を誓い、何なら"ボスガチ勢同担拒否の過激派狂信者"と俺には良くわからない言葉の羅列で灰谷に嘲笑われる我らがNo.2だが、Aに関しては度々私情を挟む。

 灰谷兄弟は只管「ずりー」「Aちゃん独占すんな」の永遠ループ。お前ら、普段国内出張さえ面倒がるだろうが。

 そしてボス。仕事だと割り切っているので文句こそ言わなかったが、俺たちに対する威厳はどこへやら、「A行っちゃうの」と子どものようにAのシャツの裾を弱々しく握り、暫く離さなかった。

 因みに、たった二泊三日である。

 取引だけなら一泊でも済むのだが、Aが人生の大半を過ごした街に帰るにあたり現地の裏ルートの確認と、純粋にかつての仲間に会いたいだろう、という九井の計らいで一日延ばした次第だ。


「鶴、あれはルゾン島よ」


 ヘリの窓から見下ろしては度々笑顔を向けてくる幼馴染みと二人きりになるのは、遠い昔イザナが佐野真一郎と遊びに出ていた時間が最後だったかもしれない。

 いや、イザナの見舞いに通う道中だったか。

 それこそ再会してからもAは常にボスや幹部、部下の誰かに捕まっているか、仕事場に篭っているもので。


「ああ……フィリピン、か?」

「ええ」


 Aが梵天に加入し再び共に過ごせる事が喜ばしい反面、明確な反社と認定されている組織に属させてしまった事において複雑な気持ちもある。

 昔から、誰よりも穏やかな陽の下が似合う奴だったから。


「ハルたちを拾った時は驚いたわ」

「……俺もだ。Aを忘れた日はなかった」

「冗談止して、連絡絶って十年以上よ」


 私は生き霊飛ばしてないわ、とA。強ち冗談でもないのだが。

 梵天の発足と同時に、ボスが亡くなった当時のイザナと髪型を揃えた。嫌でもイザナを思い起こせば、奴に追いかけ回される幼いAまで鮮明に浮かんだ。

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作者名:カーター千之助 | 作成日時:2024年3月1日 0時

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