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35. ページ37

Aちゃんがマンションを借りーー場所は"ヒミツ"らしいーー車を買ってからというもの、マイキーがいない日は割と自由に過ごしているようで、危険ではないかと懸念する俺を三途は「ゲットーで銃向けられても笑っていなす女だぞ」と信頼し切った腹立つ顔で嘲笑い、鶴蝶は「横浜以外は情報でしか知らない筈だ、Aも楽しいんじゃないか」と我が子を見守る親のように微笑んでいた。

 アジトから出掛けようとするAちゃん本人を捕まえ、付き添うと進言した事もあるが「皆そう言うけど、必要ないわ」と潔く断られる始末。"皆"、恐らく先に述べた二人も、ココや兄貴も似たような提案をしたのかもしれない。無論、鶴蝶以外は下心ありで。

 あの美貌を備えながらも、Aちゃん持ち前の朗らかな性格でユリと悶着にならなくて良かったような、全く意識されていない事実を突き付けられたような、複雑な心境である。


「キャットファイト起きなくて良かった〜とか思ってるぅ?」


 間延びした話し方はそのままに、俺に媚びる事を止めた様子のユリは、ルームサービスのシャンパンを煽りながら図星を指す。


「……まぁ」

「Aさんじゃなきゃ喧嘩売ってるっての。拍子抜けってか、流石に勝ち目ないし?」


 ユリは元々クラブで知り合った人気キャバ嬢で、兄貴と梵天傘下の店に引き抜いた今もナンバーワンをキープしている女だ。当然見た目も悪くないが、Aちゃんには白旗を上げたらしい。

 そりゃ、そうだろうな。

36.→←34. ラブホで追走する夜 *rnd



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作者名:カーター千之助 | 作成日時:2024年3月1日 0時

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