34. ラブホで追走する夜 *rnd ページ36
慣れた街、寧ろ庭、六本木。俺は女とホテルまで歩いていた。
「竜胆くん、どうしたのぉ?」
「……」
「ちょっと竜胆くん!」
「え、あ……いや、多分知り合いが」
道路を挟んでかなり距離があるが、あの一際目立つ美人……間違いなくAちゃんだよな?
横断歩道まで辿り着くと同時、ぱち、と目が合った。Aちゃんは一瞬大きな目を見開いた後、ホテル街に似合わない晴れやかな笑みを浮かべこちらに手を上げ、信号が変わると同時に駆けて来た。
「っ、Aちゃん!何してんだよ、こんなとこで」
「予定が早く終わったから、東京散策。昼は渋谷にも行ったの。竜胆のガールフレンドさん?こんばんは、私はA」
「えっ、あ、こんばんは。ユリです……」
「こっから先はやめとけ、変な男に引っ掛けられんぞ」
「私の方が強いから大丈夫よ。気になるバーがあるの」
「えっ、じゃあ俺案内すっから、」
「ユリを気遣ってあげなさい。そんなに危険ならハルかタクミに迎えお願いするわ、彼ら今日オフだし」
二人ともじゃあね、と綺麗に笑み、立ち去るAちゃんを呆然と見送る。
「竜胆くん、まさか……本命?」
「っ、違、」
「わかりやす。ウケんだけどぉ……話聞いたげよっか」
辿り着いたホテルの一室、と言ってもそういう雰囲気ではない。
ーーまさか、女との逢瀬前にAちゃんに出会すとは。
確かにここ最近、アジトで見掛ける日が減った。ほぼ毎日、仕事しに来てはいるらしいが。
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作者名:カーター千之助 | 作成日時:2024年3月1日 0時