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33. ページ35

「っ……ぐ、すっ、A……Aも、」

「うん。二度寝しちゃおう」


 Aが隣に寝転び、抱き付くボスの背をぽん、ぽんと撫でていれば聞こえてくる寝息。

 小さな顔だけをこちらに向けたAが視線で俺と三途に戻るよう促したので、寝室の戸を閉め、軽く部屋を掃除した。


「新しい家具は九井がもう受注したらしい、そのテーブルは見つかんねーみたいだがよ」


 スマホを確認しては溜息を吐く三途に「そうか」と返し、共にAの部屋を出る。


「三途はその、何でAに対して嫌な顔しないんだ?」

「あ?寧ろンでそんな事すんだ、俺がンなイカれてるように見えんのかテメー」


 正直、見える。


「いや、これまで世話役とまではいかないが、医者だのがボスの近くにいたり、商談でも女がボスにすり寄ろうとすると嫌そうだったかと……すまん。勘違い、」

「嫌に決まってんだろーが。どこの馬の骨かわかんねー野郎に薄汚ねードブアマが俺の王に近寄って良い筈ねー、マイキー本人も嫌がる」

「……ああ」

「俺は弱ェ奴も身勝手な正義振り翳す奴も、暑苦しい奴も醜い奴も、媚びる奴も巫山戯た奴もクソ真面目な奴も嫌いだ。愛だの友情だの家族だの平和だの唄うドブには反吐が出る。お前が崇拝してる黒川イザナも、東卍も天竺も俺ンとっちゃどーでも良い」


 ほとんどの人間に何れか当てはまるだろうな。


「エゲつねースラムでAと過ごした時間は生まれて初めて柄ンなく楽しいと思った、元来退屈が嫌いな王への献上品にぴったりだろ。クソ生意気だがよ、事実ビンゴだったじゃねーか」

「……Aは物じゃないぞ」

「比喩だっつの。マイキーとA以外の人間に一切の興味はねー、二人に害なす奴はスクラップだ。例えNo.3のお前でもな」


 ボスは会議の時間になっても起きて来ず、Aと良く眠れたのだと安心した。理由なく遅刻して来た灰谷兄弟はAを独占するボスが狡い狡いと駄々を捏ねた結果、俺と九井、モッチーが止めるまで三途と撃ち合いになっていた。

 後日、良く似た猫足テーブルがボス、三途、九井そして俺から届けられたAは音声アシスタントのような声色で礼を述べた。

 それでも持ち帰る訳でなく、テイストも形も違う4台をバランス良く並べ、それぞれ仕事用に、お気に入りの雑貨置きに、ドレッサーに収まり切らないエレナからの贈り物に、ティータイム用に、と大切に使っているAが可愛く思えて仕方がないのは俺だけじゃないだろう。

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作者名:カーター千之助 | 作成日時:2024年3月1日 0時

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