17.5 苦しくて *snz / mnjr ページ18
マイキーから着信を受けた俺は、Aの部屋にすぐさまクソ谷の回収に向かった。
二つ並んだ屍の横に立ち竦み、虚ろな目でズヒュー、ズヒュー、と呼吸を繰り返すマイキー。
Aに対処の仕方を教えておくんだった!
後悔先に立たず、灰谷を廊下に投げ捨てマイキーに駆け寄ろうとした俺に「ハル、大丈夫だよ」と耳打ちしたAがマイキーの前に立ち、そっと背中に手を回した。
「マイキー。ベッド行こっか」
「っぐ、ん、行ぐ」
やや錯乱状態のマイキーにAが暴力を振るわれたりしないだろうか。
深夜Aを訪れたマイキーが先客の兄弟を伸ばした、まではわかる。
何故訪れた?衝動的に殺しに来た?夜這いな筈はない。サイコパス蘭でもクラゲ頭竜胆でもない限り。
この部屋の合鍵を持つのも、俺とマイキーだけだし。
とにかく二人が心配な俺は、悪趣味だとわかりながらも両者が手を繋いで消えた寝室の扉前で音を立てず過ごす事にした。
先に聞こえたのはマイキーの嗚咽。
何があった?
「うん。大丈夫よ、マイキー。私は実質親に殺されたも同然、でも生き抜いた。不死身のAだ」
「っぐ、おれが、ぜんぶ、ひくっ、みんなを、かはっ、」
「その場にいなかった私が無責任な慰めはしないわ。人や環境のせいにするのって凄く簡単、でも自分を責めるマイキーは必要ない程に強い。ただ自分に優しくない。マイキーが許せないなら、代わりに私が全部許すから」
「っ、A……っぐす、イザ、ナ、も俺が死なせ、たとして、も?」
「事実を知ってるけれど、もしそうだとしても私はマイキーを許す。ぜーんぶ許して、こうする。ね?」
「うぇっ、うう……ぐすっ、A、A……」
「うん、落ち着いて来たわね。凄いやマイキー」
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作者名:カーター千之助 | 作成日時:2024年3月1日 0時