1. 狂乱ネシア *snz ページ1
基本的に海外は俺の仕事じゃねーが、鶴蝶がどうしても出張れず、代わりにお前が行けと九井に指示されたのは一ヶ月前。
インドネシアの某スラム街まで、銃器の取引に部下二人を引き連れ訪れていた。取引先はすぐそこ、だった筈だっつーのに。
「んだこりゃー……洞窟か？……ッ！！！」
パン、パン、パンーーー
撃たれた。
気付き、すぐさま応戦しようとしたが、撃たれどころが悪かったらしい俺の意識は途絶えた。
目を覚ませば、どこだ？腕には点滴を施されている。
「さ……んず、さん……」
「……は、お前も……？現地の病院、か？」
「自分も今起きた、ばかりで……す、みません、」
どうやら部下も運ばれたらしい。
ーー芋蔓でマイキーに危険が及んだら、
あ、詰んだわ。
今ここで舌を噛んでやろうか、そう思った時、扉の開く音と、第三者の声が聞こえた。
「日本人のお客さん、起きたの？」
ひょこ、と俺の顔を覗くように見下ろし尋ねたのは、部屋着だろうかラフな装いの若い女。
「……医者には見えねーなァ」
「違うもの。倒れてる貴方たちを見付けて、闇医者を呼んだのよ。ここは私の家、公共のボスピタルはマズいでしょう？」
今呼ぶわ、と言い、電話をかけ出した女の後ろ姿を呆然と見遣る。
ものの十分で到着したどう見ても闇医者らしい男。どう見ても胡散臭ェ……ま、闇だしな。
女の通訳で医者の説明を聞けば、驚く事に俺は六日間眠ってたんだとか。
「……ハァ！？」
「五発よ。死んでてもおかしくなかったんだから……昨日まで酸素カプセル着けてたの、お兄さん。隣の彼は二発」
復活の早さにびっくりだわ、と言いながら手渡された水をごくり一口。
「！！マイキーに連絡……「二人共、ごめんなさい」……あ"？」
「もう一人の男性は、既に息がなかった。ご遺体はどうしたら良いかわからないから、一応、安置所に置かせて貰ってる。こっちも裏ルートだから、お兄さんたちの判断で葬ってあげて」
「「……」」
「……何でテメーがンなシケたツラしてんだよ。色々聞きてー事あっけど、とりあえず俺のスマホ寄越せ、3台あったろ。ん……1台はそのケースん中」
幸いにして生きていたらしい俺のスマホと、やや汚れたノートパソコンを手渡して来た女はネットワークの接続手順も教えてくれた。
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作者名：カーター千之助 | 作成日時：2024年3月1日 0時
