* ページ10
「結婚前に話すべきだって私が言ったんですよ、自分たちの子どもの事。きっとそれで考え込んじゃってるんだわ……ごめんなさいね、Aさん。私翔平がプロポーズしたって聞いて嬉しくて、勝手に」
カトラリーを置いた母ーーAさんが今日は無礼講で美味しく頂きましょうと進言してくれたーーが、ややバツが悪そうに放てば、Aさんは「いえいえ!」と顔前で掌を向ける。
「必要な事です、いつ切り出されるんだろうと思っていました。翔平くん、悩ませてしまってごめんね」
「ううん。婚姻も僕が全部、結構強引に突き進めちゃったし」
「んふ、自覚あったんだ。でも嬉しかったよ。子どもについても、私の家庭のあれこれ含めて考えてくれてたんだよね。年齢的なリミットがあるけれど、プロポーズ受けた時点で翔平くんの意思を尊重する覚悟は出来てるから」
大丈夫だよ、と大きな垂れ目をふにゃり、柔らかくさせるAさん。全てを受け入れてくれるようなこの優しくも強い眼差しが、僕は大好きだ。「だからAさんを信じなさいって言ったのに」母さん、水差さないで。
「ミヨさんにも今更ながら、婚姻に関してお話していなくて失礼しました。きちんとした挨拶はお正月以降かな、って甘えちゃって」
「それが普通ですよ。翔平が話すもんだから、私も浮かれていただけです。Aさんならいつでも大歓迎だわ、寧ろ翔平で良いの?後悔なさいませんか?」
「ちょ、母さん!?」
「ふふ。しませんし、させません」
相変わらず男前な僕の婚約者、安心でしかない。母も一瞬目を見開いた後、嬉しそうに笑っている。
「……僕は子ども出来たら嬉しい、と思う」
「翔平くんのシーズンやらも逆算して考えようね。一番可愛い時期、見逃したくないでしょ。私は30で体の事もあるから妊活しなきゃだし、産院を日本かアメリカかも決めないと子どもの出生に影響するわ」
「あっ。Aさんのサポートに母さんたち呼ぶから、アメリカで産んで欲しい……メディアとかの目も日本より気にならなくて安心だし、何となく伸び伸び……僕のシーズン中でも立ち会える可能性があるし、無理でも赤ちゃんの時に会いたいし、」
92人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あるぶちん(プロフ) - ニューヨークで地震があったというニュースを目にしたのですが、大丈夫でしょうか… (4月6日 9時) (レス) id: d4844ac604 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:カーター千之助 | 作成日時:2024年2月29日 2時