ノット・フェア４ (ページ7)

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施設に着くも、カケルくんはAさんの手を握って離さない。Aさんと離れたくないのか、帰りたくないのか。恐らくどっちも。

「先生たちにちゃんとお話するから。ダイキが待ってるよ」

「……ん、A次いつ……「あら！灰谷統括、に大谷翔平！？」……施設長」

「子どもの話は遮らないで。大谷翔平に興奮する前にカケルをきちんと出迎えて、他今いる職員G1まで来るように伝えて。カケル、クリスマスパーティーの準備に来るよ！ダイキが喜んでくれると良いね、楽しみだ」

「は、はい……」「うん。A、またね」

　外で迎えを待つのも何なので、と併設されたテンジクの本部、応接間に寄る事になった。「立派な建物ね」「僕も驚いた」「"天竺"の首都だからねー！」Aさんが態とらしくえっへんと胸を張る。

「カケルは収監中の母親からの虐待によって、幼い頃に妹を亡くしています。祖父母とも離籍済み、まだ母の日や父の日に登校もさせてあげられない。あまり笑わない子だけれど、翔平くんとミヨさんと楽しそうで本当に嬉しかったです」

　ありがとうございました、Aさんは僕と母に頭を下げた。

「私もとっても楽しかったですよ。まさか、彼にそんな背景があるとは思わなかったけれど」

「うん。スポーツ詳しそうだし、サッカーやってるんでしょ？趣味がちゃんとあって、Aさんに心を開いてるようにも見えた」

　そこに、Aさんに呼ばれた職員であろう若年男性二人と中年女性一人が現れた。

「お、大谷選手！？」「マジ！？」

「職務中に騒ぐな。私たちは子どもの命と人生を預かってる、彼らの保護者。プロ意識の低い人間は"天竺"に要らない」

「……すいませんでした、統括。話って何でしょうか」

「カケルが先生皆怖いって。不良上がりの幹部連中、特に獅音みたいに顔面に墨が入ってたりしたらまだわかるんだけど。タキ先生、サク先生、リナ先生、あの子が何をしたら怒ってる？」

「……何度言っても宿題をしない、とか日常茶飯事で」

「急に学校をサボったり、」

「そう！今日だって！！」

「私だって学校の宿題なんかした事ないし、サボりどころか出禁だったけど万年学一だわ。あの子は人よりのんびりなだけ、指示すると焦ってパニックになる。大人に虐げられて心追い詰めた子どもに、大人が圧掛けてどうするの」

「……統括ならどうしますか」