ノット・フェア４ (ページ16)

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「A姉ー！！」

　Aさんが立派な日本家屋の戸を叩いた。数秒後、Aさんに飛び付いて来た女性は、佐野兄弟の妹で龍宮寺さんの奥様、エマさんというらしい。

「マジで大谷じゃん、サインありがとね。どうも、A姉の妹のエマでーす」

「……え？あ、はい」

「A姉は子どもの時からウチのお姉ちゃんなの」

「はい」

「……なーんか煮え切んないな。A姉、この人でマジ大丈夫？」

「うん。エマ、万作さんは？」

　どうやら、あまり良い印象を持たれていないようだ。

「……A、来たか」

「万作さん！わかる？Aだよー」

「あ、ああ……？ん、A。また新しい弟子がな、賞を」

「おー、凄いね！エマ、万作さん寝かせてあげて」

「ま、待て、そこ、のデカ、ブツ……」

「はい。はじめまして、大谷翔平です」

「Aは、生きてるか」

「え？今、目の前に」

「うむ、Aはちっこくての、でも武術は心得ておって、一回大喧嘩になった、んだ。いつも、血塗れのAに、何故そこまでお前は戦うのか、と」

「……はい」

「家族、の為に戦わ、ない人間は、クズ以下だ、と師範のわしに楯突きよって、な……。死に急ぐ、ような節もあったと、渋谷まで届いた。弟が十割か？んなこたない、だろ？自分に一割くらい、の幸せをくれても、良いだろう、が！！」

　それはそうだ。Aさんそんなに幼い頃から、自分を犠牲にしていたのか。そこに「ちょい退け」と入って来た黒髪のイケメンさん。あ、バイク屋の確か……佐野真一郎さんだ。

「A。大谷さんもわりー、祖父ちゃん寝ろ」

「邪魔す、るな……A、心技体、だ。そんなのクソ喰らえって、言う事聞かん、Aは、いつも、いつも……」

「いっぱいごめん！これから！ちゃんと！言うこと聞くよー！！」

「A、か……？」

「Aさんの事は、必ず幸せにします」

「……お前、誰だ」

「Aさんの夫になる者です」

「あ？Aはな……、」

「おやすみ」

　え？Aさんがまさかお祖父さんの米神を小突いて気絶させた。「大谷さん、嫌な思いさせてごめんな」真一郎さんも慣れたように車椅子に移し、お祖父さんはヘルパーさんらしき人に連れられ、廊下の奥へと消えた。「認知と難聴が酷ェんだ」と真一郎さん、Aさんも「真ちゃんごめんね」と苦笑いしている。