ノット・フェア４ (ページ14)

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「大谷、説明」

「貴方も近々大谷だから。良い？別に子どもは絶対じゃない、簡単に授かれるとも限らない。もし子どもが出来なくても僕がAさんを選んでる事は前提ね」

「おう」

「籍入れて、簡単な式の準備しながら二人の時間も楽しみつつ、シーズンオフに生まれるように何年かトライするってなると、Aさんの心身にも負担だし仕事の調整に支障も来すと思う」

「そうね、35とかになると焦りそう」

「だから今年父さんたちに挨拶終えて、僕が日本発つ前。日にちは17が良い」

「背番号だね」

「僕のラッキーナンバーでAさんの誕生日、4月17日だし。ぴったりでしょ」

「そうだね」

「……何でちょっと投げやりなの」

「ふはっ、拗ねないでよ。綿密過ぎて他に返す言葉がないだけ。直接監督にも挨拶行きたかったけど、代理人にしろ信用出来る人が良いもんね。私の証人は？」

「蘭くんか竜胆くん」

　無理、Aさんが即答する。まぁ、僕も薄々そう思ってはいたけど。というか、隙あらば奪い返しに来そう。

「僕が父さんでAさんは一平さんで良いよ。Aさんの周りの他の人たちも、知る限りすんなりAさん託してくれそうに思わない」

「それが証人の意味だと思うんだけど。水原さんに図々し過ぎる気がするし、頼みの恩師は亡くなったし……あ、良いのいたわ」

「誰？」

「明司武臣。弟の春が知ったら、マイキーたちを灰谷A親衛隊の如く集めて3/4殺しくらいにしてくれそう」

「……どんな恨みがあるの？」

「大学の時ナンパされて、どさくさに紛れて胸を鷲掴みにされた」

「はぁ？めちゃくちゃムカつく。その人で良いよ」

　良いんだ。言い出しっぺのくせに、仰け反ってヒィヒィ爆笑するAさん。そりゃそうでしょ、昔とはいえ彼女に痴漢されて怒らない男はいないと思う。

　その後、策を練るAさんの横顔はスパイ映画のメインビジュアルのようだった。