ノット・フェア４ (ページ12)

今日:24 hit、昨日:1 hit、合計:6,945 hit

ヤキモチと悪巧み。ページ12

夕飯を食べて、風呂に入り、ストレッチをする。普遍で、でも全部Aさんが隣にいるだけで幸せな日常の一コマになる。

　ぐにょーん。言葉じゃ説明出来ない体勢のまま「はーい」と着信に応答するAさん、器用だな。

「わー！久しぶり、帰国したの？…………丸2日！？水分摂りなよ、疲れてたんだね…………Damn man, 南アフリカじゃん。私も行くけど遠過ぎ、何の撮影？……………あー！聞いた事ある、何か漫画だ…………わかんない。でも凄いね、ハリウッド。流石だわー……ふ、ねぇー笑い過ぎ…………あっ、郷敦もいたね、そっか。うん、良いよ…………ん！ゆっくり休んでねー」

　やたら親し気な通話が終わったらしいAさんは体勢を直してふぅ、と息を吐くなり、きちんと定位置にスマホを置き水を取りに行く。

「翔平くんはプロテイン？」

「うん、ありがとう。今の電話、誰？」

「真剣佑、俳優さん」

「聞いた事ある。何て？」

「んー、とメキシコから一昨日帰国して今までぶっ通しで寝て、次の撮影がケープタウンでONE PIECEのハリウッド実写化で、私が詳しく知らなかった事をひたすら笑われて、久しぶりに会おうって」

　もの凄く詳しく話してくれたのは安心だけど「AさんONE PIECE知らないの？」「ちょっとはわかるよ！ルフィ」「ふっ、で？会うの」「お父さんのお葬式ぶりだからねー会おうかな」嫌だな。

「お相手俳優さんならパパラッチとか平気なの？」

「いつもわいわいやってる人だから、一人じゃないんじゃないかな？私騒がしいの苦手なんだけど、慕ってくれる弟っぽくて断りにくいんだよね」

「Aさんって普段はっきりしてるのに、お姉ちゃん気質だよね」

「そう？」

「うん。年下のお願いとかに弱そう」

「否めない」

　コト、と作り立てのスムージーをテーブルに置いてくれるAさん。僕もはっきり嫌だと言えたら良いのに。でも、友人が多ければ今後も当然電話も来るだろうし、堂々と出てくれるし、そもそもAさんの誠実な人柄からして浮気の心配は一切していないのだけど。向こうに気があっても気付かないのが厄介なのだ。