ノット・フェア４ (ページ2)

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ばさり、チェスターコートをを羽織り直すAさんに続く。「水原さんには私から連絡入れておくね」抜かりないAさんに頷き、「僕が車出すよ」二人で駐車場まで急いだ。Aさんは慣れた手付きでナビを入力している。蘭くんと竜胆くんが経営するクラブの一つだそうだ。

　車内は無言だった。僕たちが到着するや否や、「ヤベー大谷だ」「Aさん！？」外野の声が聞こえるも、Aさんの気迫で集って来る事はない。

「っ、姉ちゃん！！！」

「蘭どこ」

「こっち！！テメーらどけ」

　いつもよりフォーマルな装いの竜胆くんがAさんの腕を引く。「おい、蓮」「はい。Aさんお疲れ様です」「翔平くんに怪我一つでもさせたらわかってるな」「勿論です」屈強な男性が僕のすぐ側立ち、後を追った先は恐らくVIPルームの更に向こう。

　どっ、どっ、聞こえる打撲音の先には割れたガラステーブルと散らばる破片。そして血溜まりに倒れる男性を見下ろす蘭くんの姿。

「蘭、おいで」

「……」

「蘭。それは元々私の部下、後でちゃんとお話聞く。まず来な」

「……」

「成人した今度こそ前科者になるの？」

「っ、テメー散々ほっといて姉貴ヅラすんな……！！」

　蘭くんがAさんの前までゆら、と歩んだかと思えば血濡れの手で胸ぐらを掴む。僕が咄嗟に庇おうと一歩踏み出せば、蓮と呼ばれた男に止められた。

「蘭ちゃん、ごめんね」

「っ、……」

「寂しかったよね。でも私、"あの日"の約束、これからも絶対に違わない」

　Aさんがぎゅっと蘭くんを抱き締めれば、蘭くんの腕が力無く下がる。

「竜胆、まずアノ医者と備品の処理手配して」

「わかった！」

「……姉ちゃん最近翔平ばっか、」

「ふっ、私置いて一年半も檻に入ってた蘭に言われたくないんだけど」

「……ガキん頃の話だろ。俺の方がずっと、姉ちゃんの事好きなのに」

「そうなの？酷いなー翔平くん」