ノット・フェア１ (ページ42)

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「すげー！サーキット場より広いんだなー……よ、っと」

「マイキー、ダメ！」

　またもダグアウト横の席、十数列目。とはいえ50メートルは離れたグラウンドに跳ねた佐野選手の足を物凄い瞬発力と跳躍力で飛び掴み、受け身を取って抱き直すAさん。

「グラウンドは神聖な場所なの、マイキーの実家の道場と同じ。危ないから席から離れないでね」

「ほら、マイキー。朝Aちゃんが焼いてくれたたい焼きいらねーの？」

「いる！！！」

　……幸先不安だが、保護者二人いれば大丈夫だろう。Aさんは相変わらず差し入れに、と武蔵神社の勝守りを人数分預けてくれた。相変わらず用意周到かつ現地民が喜ぶものわかってるな、この人。

「翔平、これAさんから。皆にあげて」

「あーはは、オッケー。どうだった？佐野万次郎選手」

「Aさん以外手に負えないと思う、一応セキュリティーにもVIPだから注視してって頼んだけど」

「一平さんがそう言うってよっぽどだね、横暴って事？」

「いや、大っきい子ども」

「ははは、確かにAさんも言ってたな。配って来るよ」

　やはり翔平は今日も気合い充分な様子だ。その後選手たちに俺が囲まれAはどの辺りにいるんだ、と確認してから早々にダグアウト入りしてしまった。

　俺も続くと佐野選手はAさんの肩に頭を預けもぐもぐと何かを頬張っていて、龍宮寺さんはAさんに訳されながらパンフレットを読み込んでいる様子。

　頑張れ、エンゼルス。