◎一平side ページ41
Aさん観戦の日。前回同様駐車場まで迎えに行けば、やはり目立つ三人組。ただ今回は姉弟ではない。
Aさんと手を繋ぐ黒いタンクタンクトップに白いシャツをラフに羽織った小柄な男性こそ、オートレーサーの佐野万次郎選手だ。
「水原さーん!」
「Aさん、お疲れ様です!そちらが……」
「マイキーと、マイキーのチームのメカニックの堅くんです」
「はじめまして、Team of Manjiの龍宮寺堅です。本日は佐野共々ご招待ありがとうございます」
「A、誰こいつ。おーたに?」
「どう見ても違うでしょう、翔平くんの通訳なさってる水原さんだよ」
「はじめまして、ご紹介預かった通り水原一平です」
ふーん。と佐野選手が反応すれば、まさか龍宮寺さんが佐野選手に拳骨を落とした。
「ってーな、何すんだよケンチン!!」
「良い加減挨拶くらい覚えろっつってんだろーが!!」
「るせー。A、俺殴られた」
「マイキー、ちゃんと名乗ろうね。堅くんも殴らない、加減しても一応マイキーは今身体が資本なんだから」
「……悪ィ」
「佐野万次郎」
名乗った佐野選手の頭を撫でるAさん。ご満悦な表情の佐野選手に反して、龍宮寺さんは何とも言えない顔をしている。とりあえず案内しよう。
「マイキーがすいません」
「いえいえ。でも意外な一面でした」
「昨日久しぶりにAちゃんに会って子供返りしてるだけっすよ。あれで喧嘩もレースも無敵なんですけどね、昔からAちゃんの言う事以外聞かねー唯我独尊っつーか……」
案内の俺より先をずんずん進む佐野選手が迷わぬよう手を引くAさん、龍宮寺さんは弁髪にタトゥーと見た目こそイカついが常識人らしい。
「竜胆くんたちとも仲良いんですよね?」
「灰谷……兄弟は別にそうでも。あいつらどこにいても灰谷ワールドで、大人しく人の下に付くタイプでもなかったし」
「ケンチン、イッペー、早くしろよ!あ?Aに触んな」
「あああー、"ごめんなさい、大丈夫ですか?"マイキーが蹴ったら一般の方死んじゃうよ」
「当ててねーもん、Aに触ったこいつが悪い」
「今日は我慢しよう、ね?帰ったらお子様ランチするから」
「A特製俺専用お子様ランチ……!!」
ぱぁぁぁ!と顔を輝かせる佐野選手が痺れを切らした龍宮寺さんに回収され、何とか席に到着した。
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作者名:カーター千之助 | 作成日時:2024年1月1日 0時