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続いて来たホテルスタッフがテーブルに色々な料理をサーブしていく。「ん」と全て顎で指示を出す蘭くんは強いと思う。マジで英語いらないじゃん。テレビのモニターにはプレイ中のマリカー、わざわざ持って来たのか竜胆くん。
「灰谷……っていう事はお姉さんはNPO法人TENJIKUの灰谷Aさんですか?」
一平さんが名刺を見返し、やや驚いたように呟いた。テンジクというのは僕でも知っている、世界中の恵まれない子どもたちの為に活動する団体だ。確かに珍しい苗字、だけど……、
「そうそうー姉ちゃん統括、理事が俺らの元大将」
「だから姉ちゃん全然日本いねーの、節税兼ねてLAに家まで買っちゃうしさ」
不貞腐れたように続けた竜胆くんの手には既にグラスに注がれたビール。それにしても、凄いお姉さんなんだな。LAのどこだろう。
「竜胆くんたちの会社にお姉さんは参加しなかったの?」
「名前は連ねてるよ。元々俺と兄貴がクラブ好きで俺はDJもしてて、店長とか界隈に顔広いから展開してみたらって土台作ってくれたの姉ちゃんだし」
「姉ちゃんクラブ嫌いなのにな〜」
「えっ、そうなんですか」
「うん。音楽は好きだし俺が回す時は応援来てくれたけど、チヤホヤされんのも男寄ってくんのも嫌い」
「Aちゃんかんわいーから♡」
「凄いね。けど竜胆くんたちには悪いけど、僕も同じ理由でクラブは得意じゃないや」
翔平、と苦笑いしつつ咎める一平さんには申し訳ないが本音だ。華やかなこの兄弟には似合いそうな気がするけれど。
「まぁ、俺らも若い頃は寄って来て悪い気しなかったけどそろそろ飽きたし〜?スタイル拡げようとして海外も視て回ってんの」
「姉ちゃん追っ掛けるのが一番の目的な。今回は半分観光、兄ちゃんが急にタイムズスクエア行くぞって来て初日に飽きた寒いって出掛けなくなった」
「「ははは!!」」
「今回も姉ちゃん誘ったのに忙しいから暫くLAって、つまんねーのー。竜胆拗ねて直属の部下〆てたもんな」
「兄貴も西麻布の店長半殺しにして経営が滞るってココに怒られてたじゃん」
物騒だな。まぁ、彼らは間違いなく不良なんだろう。僕とは無縁の世界だ。同じ事を思ったのか、少し酔いが回った様子の一平さんが「失礼ですがお二人は元暴走族や不良の類で?」と聞いた。勇者よ。
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作者名:カーター千之助 | 作成日時:2024年1月1日 0時