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そして僕の真意には全然気が付いてくれない。そういえば一平さんが黒川さんが長年片想いしてるとか、竜胆くんもAさんめちゃくちゃモテるって言ってたし当然だと思うけど、恋人がいないのは弟二人が牽制してるのだけが原因だと思ってた。Aさんが鈍いのもあるんじゃない?
まぁ、着実に仲良くなれてるし良いか。
「再来月フィリピン寄って帰るんだっけ?」
「ん。イザナに聞いたの?」
「いや、一平さん。一平さん、黒川さんと飲みに行く仲らしいんだよね。いつの間にって感じ」
「凄いね、水原さん。イザナ結構気難しいのに……。不特定多数の方とお仕事する通訳さんはコミュ力お化けだ」
「はは。確かにね、アメリカ育ちだからオープンだし」
「そうなんだね!イザナはフィリピンの血が入ってるんだよ。孤児でも複雑でね、血は繋がってないけどマイキーの義兄で。グレちゃった系不良」
「ふっ、グレちゃった系不良って。竜胆くんたちが捕まった理由は知ってるけど黒川さんは?言いにくかったら良いよ」
「講演でもお話してるから平気。イザナは12歳の時集団にリンチされて大怪我したんだ。それで退院してから一人一人にお礼参り……わかる?に回ったの、リーダーが生きている限り関わる人間皆再起不能にしてやるって宣言して。追い詰められたリーダーが自/ 殺しちゃった」
「……そうなんだ。それで竜胆くんたちと知り合ったんだね」
「うん、イザナと私は元々面識があったんだけど。TENJIKUの幹部は私ともう一人以外全員同い年で少年院時代の仲間なの。蘭含めて極悪の世代って呼ばれてたんだ、二個上の私と一個下の竜胆もオマケで!だから引き連れた創設時の職員も暴れん坊しかいないけど、どんな凶暴な非行少年ともビビらず向き合えるのがうちの強み〜。世界が見放しても私たちは受け入れる、皆過去を持つから」
とっても可愛い自慢の子たちなの。Aさんは包み込むような柔らかい顔で笑った。
「それ、テンジクにさ……募金は個人でもしたいんだけど、施設の子どもたちに僕が野球を教えに行ったり……何か出来る事をしたいって球団に打診してみても良いかな?前から一平さんには話してて」
そう切り出すと、仕事人の面持ちになるAさん。
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作者名:カーター千之助 | 作成日時:2024年1月1日 0時