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「わー!個室も立派だ、流石翔平くん。ジャージで来なくて良かった」
「はは、Aさん普段ジャージで出歩くの?」
「うん、ジャージというかヨガウェアでどこでも行っちゃう」
「僕も拘らないけど、Aさんいつもおしゃれじゃん」
「基本チープブランドよ。今日は蘭から貰ったプラダだけど」
「へー、蘭くんとかお金かけてそうだな……Aさん何飲む?」
「翔平くん飲まないでしょ?なら私もペリエ」
「えぇー」
「?なぁに」
「酔ったAさん見てみたい。僕に気遣わずに飲んでよ」
「……じゃあ、お言葉に甘えて少し」
渡したメニューを見るAさん、睫毛長いなぁ。決まったようで、僕がウエイターを呼べば何やら難しい注文をしている。良かった、Aさんが英語話者で。
「Aさんって留学とかしてたの?」
「ううん」
「英語ペラペラじゃん、選手たちも現地人かと思ったって。一平さんも留学経験あるのかなって言ってたよ」
「嬉しい!でも独学だよ、見据えた将来的に必要になるのはわかってて。留学は手っ取り早いけど、まだ弟たち置いて行ける状況じゃなかったし」
「あーそっか。Aさんの学生時代はまだ竜胆くんたち暴走族だったんだもんね」
「そうそう。交友関係も危なっかしくて地に足ついてなかったし、目を離せなかったの」
「学業も手を抜かずちゃんと家族も守って凄いな。僕は野球一本で勉強は二の次だったけど、一平さんがAさんの論文とか興味深いって」
「世界的な結果を出し続ける人たちに褒められると光栄だけど恥ずかしいね」
言いながら白い頬を染めるAさんは本当に素直かつ謙虚だ。「可愛い」と口をついて出そうになった時にドリンクと前菜が届いた。
「最初の一杯からソフトドリンクでごめんね、乾杯」
「かんぱーい!気にしないで、改めてお誘いありがとう」
美味しい、と目を細めるAさん。顔の造りは姉弟そっくりなのに皆雰囲気が違うよなぁ……と思いきや、前菜を口にして今度は目を更に大きくした。気に入ったんだろう、これは「うめー!」の竜胆くんと同じ表情だ。
「何笑ってるの?」
「いや、姉弟だなぁって。Aさんたちそっくりだよね」
「あぁ、昔は鏡見てるみたいだった。竜胆に聞いたよ、翔平くんも三兄弟だって。似てる?」
「似てるとは思うよ」
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作者名:カーター千之助 | 作成日時:2024年1月1日 0時