* ページ28
「一環だよ。うちは基本成人まで受け入れてるから優しいだけじゃ無理、イザナたちにボコボコにされて漸く心入れ替える子もいるね。体罰は常に論点に上がるけど、スラム街で職員が弱ければ逆に殺される」
なるほど、と思った。Aさんの言う通り日本でも野球界でも体罰は問題になったりするが、危険地域ではその次元ではないのだろう。改めてテンジク及びAさんの活動の壮絶さを知った。良く名前が並ぶユニ⚪︎フ等との違いはそこかもしれない。「姉ちゃんの鶏五目美味くね?」つい箸が止まってしまっていたらしい。
「めちゃくちゃ美味いです。Aさん良かったらレシピ下さい」
「うん!お出汁は持って帰って良いよ」
綺麗に笑うAさんに見惚れながら礼を言う。本当にどれもこれも健康に配慮されたご馳走だった。
「翔平またな。オンライン対戦する日先にLINEしろよー」
「うん、竜胆くんもたまにはエンゼルスの試合観てよ」
「髭にも言われた、出来たらな」
迎えに同じく送ってくれた家の前でキャップを脱いでAさんにも礼をする。降りないのはパパラッチを気に掛けてくれているからだろう、車の中からひらり手を振られた。
「あ、竜胆くん。僕と友達なの隠さなくて良いよ、もう球団公認だし皆んなインスタいいねしてるし。僕もフォローする」
「んー……わかった。ただ何か不便があったら絶対俺らのせいにしろ、絡まれたでも何でも良いから」
「そんな事しないって」
「良いから!俺ら叩かれてナンボの世界で生きて来たし、凸られたらついでに宣伝させて貰うわ。んじゃな」
「ははは、ちゃっかりしてる。またね」
誰よりもユニークな友人と別れるのはいつも寂しいが、どうせしょっちゅうゲームする事になるだろうし。まずはAさんと二人で会う心の準備をしよう。
40人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:カーター千之助 | 作成日時:2024年1月1日 0時