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そこからは蘭くんもカメラを覚えたからかAさんの写真が増えて来る。ふにゃりと笑顔のドアップに僕、ノックアウト。蘭くんと竜胆くんもその写真をスマホで撮っている。
「いくつでタトゥー入れたの!?」
「俺が小四。姉ちゃんびっくりさせようって兄貴と」
幼い二人の背中に一つの絵を半々にした刺青。赤く腫れた肌の上にラップのようなものが巻かれている。
「びっくりしたよ。珍しく"今日姉ちゃんとギューしない"って言うから何かと思えば"じゃーん!"」
「姉ちゃんも仲間外れ嫌だって入れたがったけど俺と竜胆で"女の子だからダメ"って止めたんだぜ〜?」
「ありがとうね、血迷わなくて良かったわ。ご飯作って来るけど、大谷さん食べられなかったら無理しないで」
「何から何まですみません、ありがとうございます」
そこからは灰谷不良時代だ。土下座する裸の男たちを踏み付ける少年に血だらけの鉄パイプを肩に担ぐ少女。時を経てーー二人が少年院にいた頃らしいーー特攻服の兄弟、黒川さんもいた。引退したAさんは惜しげもなく美少女っぷりを発揮している。
「あ、横浜スタジアム……ベイスターズか」
笑顔のAさんと友人らしき女の子。「姉ちゃんのダチ、もうすぐ結婚するらしい」へー。ご友人には申し訳ないけど、やっぱりAさん段違いで可愛いな。
「よく芸能界とかから声掛からなかったね。僕仕事でタレントさんにお会いするけど、正直Aさんの方がよっぽど美人だよ」
「スカウトされまくってたよ、何なら今も。でもやりたい事決まってたし、姉ちゃんチヤホヤされんの嫌いだって言ったじゃん」
「美人なのは当たり前な〜♡」
「ベイスターズでは誰のファンなの?」
「姉ちゃーん!横浜で誰のファンなのー!?」
「今は牧が好きー!!」
Aさんにキッチンから愛を叫ばれた牧選手……チェックしておこう。「気に入らねーなぁ」と呟いた蘭くんに今ばかり心の中で頷いた。
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作者名:カーター千之助 | 作成日時:2024年1月1日 0時