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15分ほどで着いたのは恐らく僕の家より広い一軒家だった。とっとと入れと竜胆くんに背を押され踏み入れれば、シンプルながら温かみのある内装。
「蘭くん、お邪魔します」
「おー、お疲れサン」
L字型の大きなソファの対面にローテーブルを挟んだI字ソファがある。
「蘭、大谷さんに広い方お譲りして」
「えーじゃあ姉ちゃんもこっち♡」
蘭くんがAさんを抱き込むように移動すれば、僕にお茶を持って来てくれた竜胆くんが「兄貴ズリィ!」と怒り出した。
「私もコーヒー淹れて来るから離して」
腰を掛けてちら、と周りを見れば写真が飾られたコーナーを見つけた。蘭くんが目敏く「気になる?」と問うたので素直に頷けば数冊のアルバムを持って来てくれた。
「そっちが俺らの。竜胆が小学校上がってすぐくらいに姉ちゃんが初めてカメラ買ってからね。ラベル付いてんのは全部世界中の孤児、姉ちゃんの子どもー」
「俺も久しぶりに見たい」
Aさんが自分用だろうコーヒーを持って来て、竜胆くんと古いものから覗いていく。
「竜胆くん可愛いじゃん」
「たりめーだろ」
黒髪の二人の男の子、大きな垂れ目は今と変わらないがふくふくとした頬が愛らしい。どれも泥んこだったり食べ物をひっくり返しているのでやんちゃだったのだろう。
「あれ……Aさん?」
「蘭ちゃんが初めて撮ったやーつ♡」
キッチンに背伸びして何かをしている少女が振り向いている一枚。小学校高学年くらいか。端正な顔や手足にガーゼのようなものが貼られている。
「俺らにイチャモンつけて来た不良を姉ちゃんが潰した記念日!」
「竜ちゃん覚えてないでしょ。頭打ってた竜胆を軽症の蘭が"りんどー死んじゃった"って泣きながら持って帰って来たんだから」
「目覚ましてから覚えてるし!姉ちゃんが"やっつけたからもう大丈夫"ってドヤってた。でもこんだけケガしてんの」
「お目目うるうるでかんわい〜♡」
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作者名:カーター千之助 | 作成日時:2024年1月1日 0時