ノット・フェア１ (ページ19)

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「蘭、竜胆もお礼とお祝いと労いに伺ったんでしょう。ここは六本木じゃないの、他所の庭は荒らさない」

「「ごめん」」

「大谷さん、本当に今日はお招きありがとう！"皆さんも最高にホットな試合を楽しませてくれてありがとう、これからも応援するわ"、お疲れ様でした」

　気を取り直した蘭くんはAさんをバッグハグしながら肩に頭を預け、マーシュから気が逸れた竜胆くんはAさんの通訳を介して皆どんなトレーニングしてるのかと尋ね始めた。僕は一平さんに同時通訳をお願いする。

　サンディがタトゥーについて聞けば皆も興味津々だったようで、竜胆くんが「和彫じゃねーけど俺の見る？翔平のダチなら良いよ」と服を脱ぎ出し、皆が筋肉込みで盛り上がる。僕も初めてちゃんと見た。

「竜ちゃん、喧嘩が強いなら何でファイターにならないんだ？って」

「プロって事？」

「うん」

「別にんな金欲しくねーし、もっと強ェ奴いっぱいいるもん」

　Aさんと一平さんが次々と訳してくれる。

　現役時代は灰谷姉弟はセットだった。セットって具体的に？相手はいつも大人数だからスピードが速く精密な姉ちゃんが仕留め逃した相手の不意を兄貴が打ち捕えて、俺が関節を決めて狩る。ワオ、それはスマートだ。

　何で引退したんだ？小学校もまともに通ってなきゃ12でパクられて学もないし、このままだとヤクザかどのみち反社になるから。何でダメなんだ？犯罪者になるから、姉ちゃんと約束したから。

　野球観戦はどうだった？ルールがわかんないから翔平と髭以外ほとんど観客眺めて飲んでた。オイ！でも皆楽しそうだったから次の店はスポーツバーでも良いと思った。フゥー！！

「却下」

「兄ちゃん何で！？」

「結局スポーツ観戦が趣味でーすってワンチ狙って来るダセー男女の逢引屋になっから。体張ってる選手に失礼だろ」

「今日竜胆は楽しむ人を観る事を素直に楽しめて、蘭はプレイヤーの皆さんに敬意を払えたんだね。どちらも素敵だよ」

　一平さんが訳せば嬉しそうに「最高にドープな姉弟だ」とまた盛り上がるチームメイト、Aさんが「大谷さんお疲れの中、長居しちゃってごめんね」と。

「夜食って帰る？」

「蘭ちゃんAちゃんのメシが良い」

「はいはい」

　引き際はあっさり。Aさんと蘭くんは名刺もちゃっかり。竜胆くんはインスタ教えてた。え、僕知らないんだけど。