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1-0の六回表ツーアウト一塁、トラウトから僕に回って来た。一打席目は二塁打、二打席目は敬遠で終わったので今度こそ打つ。三人、いや、Aさんの方は見ない。
ーーボール
ーーボール
ーーボール
ーー外側にはみ出た球を打った。
湧き上がるスタジアム、ホームベースを踏む瞬間「大谷さーん!!!」、会食で一回きり聞いたのは、確かにこんな声だった。
兜を被せられる俺を竜胆くんに「年中こどもの日」と揶揄われる事になるのだが、竜胆くんにだけは言われたくない。
僕の四打席目が敬遠に終わるも3-0でエンゼルスの勝利だ。
一平さんに竜胆くんたちを呼んで来て貰うよう頼み、シャワールームへ向かう。良かった。三人は、Aさんはどんな反応してくれるだろうか。
「お邪魔しまーす。"皆さんおめでとう!素晴らしい試合でした"、大谷さん素敵だったよー!!」
「翔平!!姉ちゃんに聞いた、何だよあのケイエンしてくる奴ら」
「竜胆ずっとキレてんじゃんウケる」
竜胆くんが胸ぐら掴む勢いでズンズン僕に向かって来る。あー、竜胆くんに向こうの対策だのルール上OKだとか説明しても納得しなそう。顔こっわ、Aさん見えないんだけど。
「竜ちゃん、ヒヨって逃げた雑魚わざわざ捕まえる?」
「……ううん」
「だから大谷さんに詰め寄らないの。"野球に詳しくない弟は敬遠に納得出来なかったみたい、皆さんごめんなさい"、竜胆、大谷さんに言いたかった事は?」
「あ、ホームラン!有言実行凄ェじゃんおめでと、髭は……ハッケーン」
「"お、おれのファンか?"」
「"お姉さんは英語がネイティブなんだね!"」
「"最高にクールだ"」
「"胸もデカいし良いケツだ"」
「育毛剤でも使ってんの?マジこれ普通の奴がやったらダセーけど良いじゃん」
「ねー。お前ら誰の姉貴ジロジロ見てんの」
「「「"ごめん"」」」
僕から離れてマーシュの元に行って髭を触りながら首を傾げる竜胆くん、Aさんの肩を抱き寄せながら日本語でチームメイトに凄む蘭くん。一平さんに頼ろうにもこのカオスな空間に珍しく爆笑している。
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作者名:カーター千之助 | 作成日時:2024年1月1日 0時