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カリスマは国境を越える。 ページ17

ブルペンからダグアウトに戻り一同が盛り上がるすぐ側の一角を見れば、長い足を行儀良く揃えて座るAさんの隣から肩に腕を回し優雅にフローズンカクテルを飲む蘭くん、反対側からAさんの腕を掴み何やら話している竜胆くん。

 三対の紫が同時にこちらを向いた。Aさんは華奢な腕を伸ばして元気に手を振り、竜胆くんは僕を指差し片側の口角を上げ、蘭くんはにやっと笑いAさんの頬にキスをした。何だあのファビュラスな姉弟、逆ファンサービス?僕も小さく手を振り返す。

 竜胆くんがはっ、とした様子で足元から取り出し広げて見せたのはマーシュのユニフォーム、本当に手に入れたのかよ。流石に声を上げて笑った。

 先程から選手たち皆が僕に煩わしいのを無視して三人を見ていたが、トラウトまで騒ぎ出したので一平さんを呼び通訳を頼んだ。


「"日本の有名人か?"」

「"ん?ああ、違うよ。一般人。三姉弟で皆僕の友達"」

「"あんなクールな日本人がいるなんて信じられない"」

「"それ僕に失礼じゃない?"」

「"マーシュのファンなのか?"」

「"髭が好きらしいよ"」

「"真ん中のイカした美人紹介して"」

「"無理"」


 近くの席にいた少年が手前の蘭くんに声を掛ければ通訳を頼んでいるのか、Aさんの耳元で何かを話すなり頷き、少年の保護者だろう人に確認を取ったのだろうAさんは慣れた様子で少年を抱き上げ、膝に座らせた。少年の頭を竜胆くんが撫でようとすれば振り払われたのか、Aさんと蘭くんが爆笑している。

 後ろを振り向けば皆三人から貰ったタオルを持って来ていたようで、掲げたり振り回したり丸めてキャッチボールを始めたり。それ安物じゃないよ、と忠告しておいた。

 よし、行くか。

 あまりAさんたちの方を見ていても不自然に抜かれるので意識をゲームに集中していた四回表、こちらの攻撃中に黄色い歓声が上がった。まだ走者は出ていない、首を傾げれば友人三人がカメラに捕まったらしい。気付いた蘭くんと竜胆くんがポーズを取り、Aさんはただ楽しそうに笑う様子がスクリーンに映されている。

 いや、おかしくない?今まで関係者でも一般人がこうも球場で騒がれてるの見た事ないんだけど。カリスマはどこでも通用するのか?あ、今度は竜胆くんがAさんの頬にキスした。意に介さず試合を観続けてるAさん、流石。しっかり投げて来ます。

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作者名:カーター千之助 | 作成日時:2024年1月1日 0時

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