もどかしい距離。 ページ12
「Aさん免許と車持ってるんだ。でもどうせ竜胆くんたち試合観ないでしょ?」
〈翔平出るなら観に行くって〉
〈蘭ちゃんもー。日焼けしたくねーけど屋根付いてんの?〉
「席によります、日程決まったら教えて。多分ダグアウト脇の席用意出来ると思うけど……Aさんは?」
〈姉ちゃん横浜ファンって言ってた。大学時代ダチと観に行ってたって〉
〈俺らが抗争に明け暮れてる間ちゃっかりJD満喫してるAちゃん酷くな〜い?〉
「ベイスターズ……セは僕が詳しくないや、エンゼルスファンじゃない方が酷いと思います」
〈〈ははは!!〉〉
〈ま、ルールはわかるらしいから誘えば行くって言うよ〉
その日はゲームせずに終わった。やっぱりLINEで良かったよな。とりあえず竜胆くんたちがこっちに来て、予定が合えば試合を観に来てくれる事が決まった。Aさんも。
今まで誘っても興味ないと言っていたのにどんな風の吹き回しだとも思うが、大方兄弟の気まぐれとAさんパワーなのだろう。いくら日本時間深夜と言えど、二人ともテンション高かったな。
しかし、Aさんが来るとしたらーー負けられない。絶対ホームラン打つ。
Aさんと黒川さんと会ってから一ヶ月。僕は調整中、彼らはAさんの講演に回ると言っていたので皆忙しく、グループ自体ほぼ動いていない。竜胆くんたちが訪れる件で個人チャットでLINEしてみても良いかな。
"Shohei O: こっちでも改めてよろしくお願いします。竜胆くんたちが来月LAに来るって聞きました。Aさんも一緒に試合観に来てくれませんか?"
"Shohei O:〈ホームランのスタンプ〉"
ただの連絡ツールで緊張するのは初めてだ。キモい、かな。Aさんは男に言い寄られるの嫌いって言ってたし……。でも竜胆くんたちが来る事が決まる前から直で試合を観て欲しかったし、いっか。
よし、と息を吐きシャワーを浴びに行くなり、返事があった。
":May: お疲れ様!是非是非、暴れん坊二人の子守りに参ります。本来なら自分でチケット取るべきなのだろうけれど、ごめんね。よろしくお願いします。"
うん、シンプルで良し。そして会話が終わった。でも彼女の前でプレイ出来るのは良い意味で緊張するし、活力になる。
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作者名:カーター千之助 | 作成日時:2024年1月1日 0時