確かめ合う ページ28
体から溢れ出んばかりの興奮とやる気に突き動かされて、二人は部屋を出ると、左右に別れて小走りに突き進む。
早く鍛錬がしたくてたまらない。
こんなに浮かれているのは初めてだ。
ずっと恋焦がれていた人が将来を誓ってくれた。
鬼でも構わないと、私が良いのだと言ってくれた。
曲がり角に差し掛かった時、後ろ髪を引かれるような気持ちで、足を止めた。
ゆっくり振り返ると、善逸も振り向いていて視線が交わった。
まるで共鳴しているかのように、同時に方向転換し、歩き出す。
部屋の扉の前でぶつかると、善逸に至極真剣な眼差しを向けられて、その瞳から目が離せなくなる。
どのくらいか……、
見つめ合ってから善逸が短く訊ねた。
「……もう、怖くない？」
あの得体の知れない恐怖心はすっかり消え去って、もうその事自体も忘れていた。
(不思議……)
私は小さく笑って、その問い掛けに答える代わりに、そっと目を閉じた。
腕にゴツゴツとした男らしい手の感触を感じると、
私の体は大好きな香りに包まれて、途端に幸福感で満たされる。
その背に手を回して、服の布を握った。
それから吐息が鼻の頭を掠めると、
しっとりと濡れた柔らかな感触が唇を刺激する。
二人の想いが重なった瞬間だった。
ほんの僅かな間だけで、堪能する間もなく離れる。
瞼を持ち上げて名残惜しく見つめると、善逸の熱っぽい視線と絡み合って、心臓が跳ねた。
彼の手が私の頬を包むと……もう一度、
今度は、その味をじっくり堪能するように求め合った。
(この人が好きだ……すごく、もの凄く……)
なんて単調な言葉だろう。
だけど、この気持ちを表現しきれる言葉は、
きっとこの世にはない。
互いのそれが離れると、乱された呼吸を整えようと深く息を吸った。
それから我に返って、急に恥ずかしくなる。
それは相手も同じようで、一緒に顔を赤らめて俯いた。
「……そ、それじゃあ」
「う、うん……」
目を合わせられずに、あっさりした挨拶を交わす。
それもどうかと思って、一言付け加えようとすると、
「頑張って」
「頑張れ」
声が重なった。
それも同じ内容で、互いにチラリと目配せする。
それから、それに返事をしようとして、
「「いってきます！」」
今度は完全に一致して、同時に吹き出した。
一緒に羞恥心も吹き飛んでいったおかげで、ちゃんと顔を見られるようになり、笑い合った。
じゃあね、と軽く手を振って目的地へ歩き出す。
今度は振り返らずに。
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maicoo(プロフ) - ゆんゆんさん» だいぶ前にコメント頂いていたのに、返信が遅くなり申し訳ありません！優しいお言葉、ありがとうございます。かなり間が空いてしまいましたが続きを書いたので、まだご興味がありましたら読んで頂けると幸いです。 (2020年10月9日 13時) (
レス) id: e4977cc5c7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆんゆん(プロフ) - 更新頑張ってください！待ってます！ (2020年5月15日 15時) (レス) id: 91470d6548 (このIDを非表示/違反報告)
凛(プロフ) - プロ目指しているならちゃんと完結してほしかったです。 (2020年5月12日 3時) (レス) id: f03e58bde9 (このIDを非表示/違反報告)
maicoo(プロフ) - もっさん» コメントありがとうございます！実はプロを目指していて、普段はオリジナルを書いています。夢小説は文章と表現力の練習にもなるし息抜きがてらにやっているので、ペースはまちまちですが……。色々と悩む事があったので、凄く励まされました！これからも頑張ります！ (2019年10月7日 9時) (レス) id: e4977cc5c7 (このIDを非表示/違反報告)
もっ - このシリーズ、なんだかプロの小説家さんが描いているようで凄く面白いです…！更新頑張って下さい！！ (2019年10月6日 14時) (レス) id: c9f0456c30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：maicoo | 作成日時：2019年9月25日 22時
