何も言えない ページ16
『なんで止めないんだよ！？』
『いや、だって……もの凄く頑張ってたから、なんだか声をかけられなくて』
すまなそうに言う炭治郎を置いて、俺は走る。
あの猪は女児だろうが、平気で踏みつけにするような奴だ。
しかも容赦がない。
『王は、この俺だ！！』
いつか伊之助が意気揚々と言っていたのを思い出す。
(─── そういうことだったのかよ！！)
「あいつぶっ殺す！！！」
走って走って、ようやく裏山に辿り着くと、聞き耳を立てて居場所を探る。
打ち付け合う音、呻く声、吐息……正に争いの音がして、不安を抱えつつ走っていくと、二つの影が見えた。
(────ほ、本当にやってる！！)
いざ、目のあたりにすると、目を疑ってしまうような光景だった。
伊之助に組み敷かれたAが今にも殴られんとされている。
「────やめっ……！？」
すぐに止めに入ろうと声を張り上げようとしたが、言葉に詰まった。
瞬きする間もなく、Aが伊之助を投げ飛ばしたかと思えば、間髪入れずに何度も蹴りをお見舞している。
最後に強烈な回し蹴りが横面に当たり、伊之助は吹っ飛んだ。
これには開いた口が塞がらない。
すぐに起き上がった伊之助が猪突猛進と言わんばかりに突っ込み、Aに重々しい一撃を入れた。
伊之助に殺意を覚えつつ、Aに駆け寄ろうとしたが、声同様、足も動かなかった。
軽々と飛ばされたAは、木の幹に当たって止まるが、口を伝う血を手で拭った顔は、なぜか笑っている。
(───ほ、本当にAちゃんなの……？)
狂気すら感じるその笑みは、なぜか楽しそうにも見えて、でも必死で───、
(……頑張れ………頑張れ！！)
気が付くと、気の陰から観戦しながら心の中でAを応援していた。
痛くても苦しくても、
もの凄く努力をしたんだと思う。
育手の元で修業をしていた頃を思い出して、Aの姿を重ねた。
もっとも、自分は泣いて逃げてばかりだったけれど、あの辛い修業をしたから今ここにいる。
伊之助と渡り合っているAちゃんもきっとそうなのだ、と妙に納得してしまった。
未だ決着のつかない二人に背を向け、すごすごと山を降りた。
今なら炭治郎の言っていた事が分かる気がする。
屋敷に戻ると、炭治郎が心配そうな顔を向けてきた。
「ごめんな、善逸。悪かった」
「いや……」
ベッドに入ると、背中に注がれる視線を感じながら一言だけ呟いた。
「─── 俺も、止められなかった」
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maicoo(プロフ) - ゆんゆんさん» だいぶ前にコメント頂いていたのに、返信が遅くなり申し訳ありません！優しいお言葉、ありがとうございます。かなり間が空いてしまいましたが続きを書いたので、まだご興味がありましたら読んで頂けると幸いです。 (2020年10月9日 13時) (
レス) id: e4977cc5c7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆんゆん(プロフ) - 更新頑張ってください！待ってます！ (2020年5月15日 15時) (レス) id: 91470d6548 (このIDを非表示/違反報告)
凛(プロフ) - プロ目指しているならちゃんと完結してほしかったです。 (2020年5月12日 3時) (レス) id: f03e58bde9 (このIDを非表示/違反報告)
maicoo(プロフ) - もっさん» コメントありがとうございます！実はプロを目指していて、普段はオリジナルを書いています。夢小説は文章と表現力の練習にもなるし息抜きがてらにやっているので、ペースはまちまちですが……。色々と悩む事があったので、凄く励まされました！これからも頑張ります！ (2019年10月7日 9時) (レス) id: e4977cc5c7 (このIDを非表示/違反報告)
もっ - このシリーズ、なんだかプロの小説家さんが描いているようで凄く面白いです…！更新頑張って下さい！！ (2019年10月6日 14時) (レス) id: c9f0456c30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：maicoo | 作成日時：2019年9月25日 22時
