月華―狼陛下の花嫁― (ページ3)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:6,364 hit

冷酷非情の狼陛下　＃３ページ3

「あー、疲れたー。ゆーりんもお疲れさま。」

にへらっと笑いながらぼすっと椅子に腰を下ろす彼、

そう、"狼陛下"その人。

な、なんという変わり身…

「今日は政務室まで来てもらっちゃってごめんね？最近やっと縁談の話がなくなったと思ったらもう一人妃を、ってまたうるさくなってきちゃって。狼陛下の寵愛ぶりを見せとかなきゃって思ってね。」

彼は困ったように眉を下げてへなっと笑った。

敵味方双方から冷酷非情の狼陛下として恐れられている国王・珀黎翔は全て彼の演技。

実際はこんな風にニコニコと笑う優しい王様。

「今日はゆーりんがいてくれたから政務早く終わっちゃったよ」

そう言って、んー、と大きく伸びをする。

「そ、そうですか…」

曖昧に返事をしながらもはや見慣れた陛下の素の姿を改めて見つめた。

そりゃ、こんな狼陛下の姿…他の人には見せられないよね…

あんな怖くて冷たい狼陛下が…一体どうしたらこんな…

「…？」

無意識に険しい顔をしていたらしく、陛下は不思議そうな顔をした。

「ゆ、ゆーりん？どうしたの…？」

「あ、いや、なんでも…はは…」

「え、あ、そう…？」

「あ、そうだ。美味しいお菓子を頂いたんです。良かったら一緒にどうですか？」

精一杯の笑顔で話題を逸らす。

「わー、ありがとう。
あれ？ゆーりん、その箱って…」

お茶の準備をしだした私の側にある見るからに豪華な箱をさして陛下が言った。

「あぁ。お妃様にって、最近よく贈り物を貰うんです。」

簪(かんざし)とか綺麗な織物…各地の新鮮な果物…

王都育ちのド庶民の私には目に毒なものばかり…

まぁそのどれもが李順さんに取り上げられる訳だけど…；

たまに残される物もあるけどそれすらも私には高価に見えて未だに何一つ使えないでいた。

「ていうか、よりによって政務室までいかなくたって…。
ただ家臣の視線が痛いだけっていうか…」

特にバイト妃の上司の視線が一番キツい…

何かヘマしたらお給料がどうなっても知りませんよオーラが…

「そんなことないよ。ちゃんとゆーりんは妃らしく出来てたって。」

そうかなぁ…

狼陛下に見惚れでもして変な顔してなかったか心配…

そんなことは絶対言えないけど…

「あ、でも…」

陛下は深刻そうな表情をした。

え！？やっぱり私変な顔を！？

次に徐に立ち上がった陛下は私の方へ一歩近づく。