. ページ22
「エミさーん！」
紅茶に口を付けようとした瞬間、部屋の窓が開いた。
驚いて振り向くと、この学校では珍しいパーカーを着た男子生徒が窓枠に足をかけていた。
「ゾムさん…！ドアから入って下さいといつも言ってるのに…」
「ええやん。こっちのが近道なんやし」
緑のパーカーの彼は、テーブルのお茶菓子を見つけるとなんの躊躇もなく口に入れた。
「ん？あんは、はれ？」
私に気付くと、口をもごもごしながら言った。
よく聞きとれないけれど、私が誰なのか聞いているのだろう。
「ゾムさん、はしたないですよ」
「エーミール様、構いません」
椅子から立ち上がり制服のスカートを軽く持ち上げる。
「お初にお目にかかります、ゾム様。Aと申します」
苗字は敢えて名乗らなかった。
両親はそれすらも許されないだろうから。
ゴクリと茶菓子を飲み込んだゾム様の雰囲気が変わった。
「お前、グルッペンの……」
肌を刺す、恐らく殺気。
「なんでここにおるん？グルッペンがダメやったからってまさかエミさんを…」
「ゾムさん！！！」
エーミール様が彼の口を塞いだ。
けれど言いたいことは十分に伝わった。
あぁ、そうか。
そういう風に思われているのか。
「Aさん、すみません！ゾムさんが…」
「いえ、思えば私の行動は軽率でしたね」
婚約を破棄された女が別の男性と密室で2人きり。
何を思われてもしょうがない。
「考えが足りず申し訳ありません、エーミール様」
「Aさん…、私は……」
「……やはりここへはもう来ない方がいいですね」
借りようと思っていた本は、諦めよう。
外出の許可が取れたら買いに行けばいい。
「失礼します」
エーミール様が入れてくださった紅茶を飲むことはできなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2804人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
暁 - 神作品ですね！ｽｩｰ大好きです！！！！！ (8月10日 10時) (
レス) @page41 id: 1fc9dc00b9 (このIDを非表示/違反報告)
おぼろどうふ(プロフ) - やば、なんだこれ神小説じゃねぇか。なんで今までオススメに出てこなかったんだよ…！ (2021年1月30日 16時) (レス) id: 464a1b954d (このIDを非表示/違反報告)
プロローグ - 見せたこと何になっています。違ったらすいません (2020年3月11日 22時) (レス) id: 3f29d20ec2 (このIDを非表示/違反報告)
らに(プロフ) - 澪華さん» 返信が遅くなり申し訳ありません！ありがとうございます！ (2020年3月10日 18時) (レス) id: 70456fd48d (このIDを非表示/違反報告)
らに(プロフ) - 春奈さん» 返信が遅くなり申し訳ありません！これから夢主ちゃんには幸せになってもらいますのでご安心ください！ (2020年3月10日 18時) (レス) id: 70456fd48d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：らに
| 作成日時：2020年2月12日 12時
