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何故こんなにも朝は早くやってくるのだろうか。まだ布団から出たく無かった。入水で目を覚ます時間が欲しかった。青年は欠伸をしながらはインターホンを押した。

「ゆめちゃん、お早う」

玄関まで出てきた少女は小さく頭を下げた儘、やや下を向いている。

「そんなに緊張しなくても良いよ。楽しくやろう?」

少女の肩を叩きたい気持ちを押し込み、青年が一歩近づくと少女は僅かに顔を上げた。

「どこでやりたい?この前はリビングだったよね。今日もリビングでやる?それとも部屋が良いかな?」

靴を脱ぎ、段差になって一段へこんでいる玄関から上がった青年は、少女に尋ねる。

「部屋」と聞かれた時少女は頷き、案内してくれと頼む青年の前を歩いて階段を上がっていった。

「此処がゆめちゃんの部屋か、じゃあお邪魔するね」

青年はゆめ、と平仮名で書かれたタイルで飾ってあるドアを開ける。白い、とまずそう思った。

白がメインというよりも、白しか無い、という方が正しい部屋を面白がり、笑う青年。

「ゆめちゃん、白好きなの」

頷く少女は制服を着ているが、きっと私服も白尽くめだ。

こんな事を言うのは少し変かもしれないけれど、と青年は言った。

「最初のうちは勉強よりも私と楽しくお喋りして欲しいな。人と話すのは好き?」

少女は首を振る。

「私は好きだよ、どちらかというと話すのが。でも今はゆめちゃんの話が聞きたいんだ。最近夢中になっている事とか良かったら話してよ」

今までの20分一言も話していないことを一番気にしているのは矢張り彼女だ。

「あの、私」

「うんうん」

思い切って口を開くゆめ。よし、ゲームクリアだ、と青年は大きく頷いた。

「垢抜けたい、です」

「えええ、ゆめちゃんが?どうして?何か言われたの?」

かなり予想外の返答に青年は呆然とし、とっさの対処法として、取りあえず理由を聞くことしか無かった。

「ぶさいく、とか」

好きな人に振られた。クラスの女子数人からは悪口を永遠と聞かされた。部活の後輩からは虐められた。

まさかそんな話になると青年は思っていなかった。

「あ、やっぱり、ごめんなさい」

急な自分語りに恥ずかしくなったゆめは、顔の前で手を振って謝る。

「成る程、垢抜け、か。ごめんなさいしなくて良いよ。今でも充分可愛いし良い子。ゆめちゃん、意地悪してきた奴ら全員、見返してやらない?」

さて、ゆめちゃん、本気出そうか。

太宰治の本気、侮って貰っちゃ困るよ?

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作者名:とおゆち x他1人 | 作成日時:2024年1月23日 22時

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