【d!】美味しいご飯の為ならば (ページ12)

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10食目* ページ12

まさか気付いていないなんて。

いつもは面布もとっているし服も着替えていた。
今日はたまたま会議が長引き、着替えるよりもまず腹を充たしたかった。
幹部の為に用意された食事には全くと言っていいほど手をつけられなかった。
匂いだけで胃が重くなるのだ。

いつもは柔らかい笑顔で迎え入れてくれるのに、今日は固く貼り付けたような笑み。

どうしたのかと声をかけようとした瞬間、彼女が土下座した。
わけが分からず目を丸くしていると、どうやら俺が幹部だと気付いていなかったようだ。
別に幹部だからと言って彼女に何か命令するつもりはない。
ただいつもの様に美味しいご飯を食べさせて欲しい。

だから、距離を置かないで欲しかった。

「ほらロボロって呼んでみ？」
「む、無理です！ロボロ様！」
「今は幹部やない言うたやろ」
「ロボロさん！ロボロさんで勘弁してくだい」
「しゃあないなぁ。それでええよ」

狼狽える姿が面白くて思わずからかってしまった。
「寿命が縮む…」と心臓を抑える彼女にクスリと笑って、出された温かい麺をすする。

じんわりと体が暖まるし、すごく美味しい。

「そっちの名前も聞いとらんかったな」
「あ、Aと申します！」
「Aか。改めてよろしゅう」

そう言うと彼女は何か考えるように首を傾げた。

「どうしたん？」
「いや、ロボロさん童貞って聞いてたんですど全然そんな感じしないなって思いまして…」

バキッと手に持っていた箸が割れた。

「それ、誰から聞いたん？」
「えーっと、たしかコネシマ様の部隊の方ですね。隊長がでっかい声で話してたって教えてくれました」

(コネシマ、覚えてろよ)