【d!】美味しいご飯の為ならば (ページ30)

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28食目* ページ30

違和感の正体にもっと早く気が付くべきだった。

「片付けまでやるのが料理人ですよね！」

ぷりぷり怒りながら大鍋を持ち上げるA。
あいつは自分を特別だと思っている勘違いヤローだからな。
調理器具の片付けを俺たちに丸投げすると、偉そうに大して美味そうもない高カロリーの料理をドヤ顔で作って幹部様の所へ運んでいった。

それにしても今日いたあの2人。
初めて見る…けどなぜだかどこかで見覚えがあった。
気のせいだろうか。
だけど軍人として働いてきた俺の感が何かを訴えている。

「マルコ、怒ってる？」
「ん？あー腹は立ってるけどちょっと気になってな」
「気になる？」
「あぁ。お前あの2人どう思った？」
「うーん、料理人って言う割には包丁さばきが下手だった」
「だよな」

おかしい。
あんな奴らを厨房に入れるなんて。
ゴツゴツした手は包丁を扱い慣れてないようだった。だけど手にはタコが……いやまて、あの位置にできるタコは包丁じゃない。
俺にも昔はあった。
今はもうなくなってしまったけど。

あれは、剣ダコ？

Aが洗い場に置こうとした鍋を慌てて取り上げた。

「ちょっと！これから洗うのに！」
「待ってくれ！確かめたいことが…」

鍋のそこに僅かに残ったスープ。
それを指先で掬い、口に入れる。
海鮮の出汁……その向こうにある僅かな苦味。
暗殺部隊に入隊した時に教わったのは、人の急所と人を死に至らしめる毒だった。

「…A！！」

思い出した。
この味も、あと2人の顔も。

「急いで幹部様のところへ走れ！！」
「え？」
「このスープ、毒が入ってる！」
「…はぁ！？」
「あいつら、N国のやつらだ！！」