第8講 ページ8
彼女を海に連れていこう。
一織がそう思いついたのは、つい昨日のことだ。
ずっと成人式の後どこに連れていくか考えていた。だが、どこもいまいちピンと来ない。
____きっかけは、久々の雑誌の表紙の仕事だった。
「一織さん!またまた大抜擢ですよ!歴史ある女性誌の表紙撮影のお仕事です!男性が表紙を飾るのは6年振りだとか…!」
マネージャーの紡がわざわざ興奮気味に直接伝えてきたので、一織は少し気圧されながらも仕事内容を確認する。
「…ブライダル誌、ですか。」
成人式の前日。久しぶりに彼女に会えるというタイミングで、なんという話題…。
いや待て…と、一織は脳内の邪念を払いつつ、資料に再び目を戻す。
『テーマは、南国リゾートで夢のマリンウェディング!』
マリン…ウェディング…
「海…」
「…どうかされましたか?一織さん。」
一織はハッと意識を戻し、いえ。と紡に冷静を装う。
海なら人も少ないだろうし、向かう時間帯的にも綺麗だろう。何より、会場から1時間ほどで着く。
次の仕事の時間の兼ね合い的にも、問題ない。
ウェディングから連想したことに少し気恥しさを感じながらも、一織は彼女を海に連れていくことを決めたのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「うわっ…!すごい風!」
海岸近くの駐車場に着いただけで、彼女の気持ちが高揚しているのがわかって安心する。
____成人式二次会会場で見つけた、淡いクリーム色のドレスを身にまとった彼女は…見違えるほどに綺麗だった。
普段なら着ないような色だ。パステルカラーは少しハードルが高いと言っていた彼女のあのドレス姿…正直、胸が高鳴ってしまった。
もう彼女はすっかり"女性"になっていて…改めてそれを強く感じさせられた。
出会った頃の話になると、彼女は楽しそうに笑い出す。
思い出話なんて家族かメンバーとしかしたことがない一織にとって、共通の思い出を辿れる彼女がどれほど愛おしく感じたか。
「一織くん!早く!」
一織は、突然走り出した彼女の背中と揺れる髪を見つめながら歩き出す。
振り返ったあなたは…あの頃のまま、なんて優しく笑うんだろう。
____無邪気にくしゃりと笑うあなたの笑顔を、私が守りたい。
愛しくて、気づいたら一織は彼女を抱きしめていた。
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アイリス(プロフ) - 毎話コメントはしていないのですが通知が来る飛んでいくんですよ😂時間があれば読み返したりして何度も楽しませてもらっています!こちらこそいつも素敵な物語をありがとうございます🙇 (2022年3月6日 22時) (レス) @page32 id: 01923abc00 (このIDを非表示/違反報告)
なたね(プロフ) - アイリスさん» アイリスさん!😳ご無沙汰しております😢そうですね、2人の心と天くんの心に注目して見守って頂ければと…😌今日の夜また更新予定なのでぜひまたよければ覗きに来てくださいね☺️いつも本当にありがとうございます!<(_ _*)> (2022年3月3日 11時) (レス) id: 1ba5a28d82 (このIDを非表示/違反報告)
アイリス(プロフ) - こんにちは!これからどうなるんだろう…!とドキドキしました😳だけど2人の心が離れることはないと思うので、嫉妬かわいい〜と楽観的に読ませて頂きます😂 (2022年3月2日 22時) (レス) @page29 id: 01923abc00 (このIDを非表示/違反報告)
なたね(プロフ) - monaさん» 更新するする詐欺になってしまっているのですが🥲2月半ば以降は繁忙期から解放されるのでガンガン更新していきます🙇♀️それまで宜しければお待ちください☺️コメが届いたので飛んできましたが、嬉しいお言葉有難うございました…!! (2022年1月28日 3時) (レス) id: 1ba5a28d82 (このIDを非表示/違反報告)
なたね(プロフ) - monaさん» monaさんコメントありがとうございます!なんて嬉しいお言葉でしょう🥲一織の口調や行動はかなり気をつけているので、そう言って頂き安心致しました…!アイナナ愛、感じてください…!☺️最近全然覗けてなくて(続きます💦) (2022年1月28日 3時) (レス) id: 1ba5a28d82 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なたね | 作成日時:2021年4月29日 0時