第21講 ページ21
心臓がうるさいくらいに鳴って、息を吸うこともままならない。
…まずこんな宣言をしてから言うこと自体が変な気もするけれど。
上手く口が動かなくて、恐る恐る一織くんに思わずうつむいてしまっていた視線を戻す。
「言ってください。」
目が合った瞬間、一織くんは真っ直ぐな声でそう言った。
その真剣な眼差しは、全て受け止めることを真摯に私に伝えていて…また視界が涙で歪む。
私も、真摯に向き合わなきゃ。この視線に、彼に、彼の愛に報いたい。
「私、ね。」
____思いの丈を。『私が』どうしたいのかを。
「この先どんなことがあっても、一織くんに迷惑かけちゃったとしても…絶対、ずっと好きだから…何度でも、一織くんのこと好きだって、ずっと思えるから……」
もう言葉足らずでも、上手く伝えられなくてもいいんだ。
私と一織くんとなら、『伝わる』から。
涙を拭ってる暇なんてない。
「だから、どうしても……どうしても一織くんのそばにいたい…、私は、一織くんと一緒にいたい。」
…言えた。
思えば、こんなにも素直に自分の気持ちを誰かに打ち明けたのは初めてかもしれない。
言いながらまた顔が火照ってくるのがわかる。
緊張して手に汗を握っている。
……一織くん。
「…本当にそれだけですか?」
…驚いて顔を上げると、一織くんは眉をひそめ、何かをこらえるような顔をしていた。
「…う、うん……?それだけ…っていうか。これが全部っていうか…」
「わかりました。」
食い気味に一織くんが言う。一織くんの耳は少し赤くなっていた。
…一織くん、どうしたんだ。
予想外の反応に少し戸惑っていると、一織くんが私との座っている距離を詰めた。
「Aさん。」
「は、はい。」
「私もわがままを言います。」
……え?
え?なんて…?
そう言ったあと一織くんは珍しく顔を横に背けた。
「わがままを言うと言ったんです…!いいですか?」
照れているのか少し声を張って一織くんが宣言をする。
可愛いけど…これは私と同じことをしようとしてくれているのだろうか。
そして、一織くんは小さな声で言った。
「…今、無性にあなたを抱きしめたい…」
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アイリス(プロフ) - 毎話コメントはしていないのですが通知が来る飛んでいくんですよ😂時間があれば読み返したりして何度も楽しませてもらっています!こちらこそいつも素敵な物語をありがとうございます🙇 (2022年3月6日 22時) (レス) @page32 id: 01923abc00 (このIDを非表示/違反報告)
なたね(プロフ) - アイリスさん» アイリスさん!😳ご無沙汰しております😢そうですね、2人の心と天くんの心に注目して見守って頂ければと…😌今日の夜また更新予定なのでぜひまたよければ覗きに来てくださいね☺️いつも本当にありがとうございます!<(_ _*)> (2022年3月3日 11時) (レス) id: 1ba5a28d82 (このIDを非表示/違反報告)
アイリス(プロフ) - こんにちは!これからどうなるんだろう…!とドキドキしました😳だけど2人の心が離れることはないと思うので、嫉妬かわいい〜と楽観的に読ませて頂きます😂 (2022年3月2日 22時) (レス) @page29 id: 01923abc00 (このIDを非表示/違反報告)
なたね(プロフ) - monaさん» 更新するする詐欺になってしまっているのですが🥲2月半ば以降は繁忙期から解放されるのでガンガン更新していきます🙇♀️それまで宜しければお待ちください☺️コメが届いたので飛んできましたが、嬉しいお言葉有難うございました…!! (2022年1月28日 3時) (レス) id: 1ba5a28d82 (このIDを非表示/違反報告)
なたね(プロフ) - monaさん» monaさんコメントありがとうございます!なんて嬉しいお言葉でしょう🥲一織の口調や行動はかなり気をつけているので、そう言って頂き安心致しました…!アイナナ愛、感じてください…!☺️最近全然覗けてなくて(続きます💦) (2022年1月28日 3時) (レス) id: 1ba5a28d82 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なたね | 作成日時:2021年4月29日 0時