第14講 ページ14
一織は耳を疑った。
○○市は…まさしく彼女が一人暮らしをしている場所だった。
そんなはずは……あの市は小さな市だが、人口もさして少なくはない。彼女だとは、全く断定できない。
普段の一織ならそう思い直すだろう。
だが、一織はこの時動揺していた。
優しくてマメな彼女から音信不通なのも……都合がついてしまう。
何より、あの報道の後というのが一織の心を揺さぶった。
会えない日々、多忙なスケジュール、虚偽の報道、そして音信不通の彼女……
一織にとってこの上なくイレギュラーな状況であり、とてもではないが正常な判断が下しにくい精神状態だった。
____ここで、彼女まで失ったら…
そう思った瞬間、一織は冷や汗を流しながら通りすがりの男らの肩を掴んでいた。
寮に帰る途中だったので、変装も何もしていない。だが、そんなことは今の一織にとって全く関係の無い話だった。
「おじさん!その話はいつ聞いたんですか!?」
「どわっ!?誰…?いや、さっきだよ…そろそろローカルのネットニュースにでも取り上げられるだろ。」
血の気が引いていく。
深夜であれば…路上の殺人事件も日中よりは起こりやすいだろう。
「…っ!」
一織は男らに短く頭を下げ、そのまま走り出す。
その形のいい目は見開かれ、全身から嫌な汗が吹き出ていた。
そのまま寮の駐車場の車に飛び乗り、エンジンをかける。
「……大丈夫…」
できる限りの最短ルートを車で走りながら、一織は言い聞かせるようにつぶやく。
こうでもしないと落ち着いていられない。人生で1番嫌な心臓の鳴り方をしている。
きっと今彼女が無事でも、電話に出てはくれないだろう。
明日の予定も早朝から埋まっている。本来なら会いに行く時間は取れない。
でも……そんなこと構っていられるものか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今何時なんだろう。
気づいたら、私は玄関先の廊下でへたりこんだまま寝てしまっていたらしい。
「…寒っ。」
冬の廊下でそのまま寝るとか…だめじゃん、風邪ひいちゃう。
そう思って動こうとしたけど、足が痺れて上手く動かない。
動く気も起きなくて、天井を見上げてふぅとため息をつく。
「…一織くん…」
「はい、なんですか?」
……え?
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アイリス(プロフ) - 毎話コメントはしていないのですが通知が来る飛んでいくんですよ😂時間があれば読み返したりして何度も楽しませてもらっています!こちらこそいつも素敵な物語をありがとうございます🙇 (2022年3月6日 22時) (レス) @page32 id: 01923abc00 (このIDを非表示/違反報告)
なたね(プロフ) - アイリスさん» アイリスさん!😳ご無沙汰しております😢そうですね、2人の心と天くんの心に注目して見守って頂ければと…😌今日の夜また更新予定なのでぜひまたよければ覗きに来てくださいね☺️いつも本当にありがとうございます!<(_ _*)> (2022年3月3日 11時) (レス) id: 1ba5a28d82 (このIDを非表示/違反報告)
アイリス(プロフ) - こんにちは!これからどうなるんだろう…!とドキドキしました😳だけど2人の心が離れることはないと思うので、嫉妬かわいい〜と楽観的に読ませて頂きます😂 (2022年3月2日 22時) (レス) @page29 id: 01923abc00 (このIDを非表示/違反報告)
なたね(プロフ) - monaさん» 更新するする詐欺になってしまっているのですが🥲2月半ば以降は繁忙期から解放されるのでガンガン更新していきます🙇♀️それまで宜しければお待ちください☺️コメが届いたので飛んできましたが、嬉しいお言葉有難うございました…!! (2022年1月28日 3時) (レス) id: 1ba5a28d82 (このIDを非表示/違反報告)
なたね(プロフ) - monaさん» monaさんコメントありがとうございます!なんて嬉しいお言葉でしょう🥲一織の口調や行動はかなり気をつけているので、そう言って頂き安心致しました…!アイナナ愛、感じてください…!☺️最近全然覗けてなくて(続きます💦) (2022年1月28日 3時) (レス) id: 1ba5a28d82 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なたね | 作成日時:2021年4月29日 0時