第28問 ページ28
「…え？部費って、盗まれたんじゃないの？」
え？今、私が盗んだって……
「いや、盗まれたと思うんだけど！それがAなんじゃないかっ…て。」
副部長が素早く小声で告げる。目を、合わせてくれない。
「だって……A、すっごく朝早く学校来てるじゃん…？朝練より早く…。今朝茶封筒が無くなったなら、Aしか、できないことだから。…ほら、朝鍵とか取りに行ってるでしょ？」
……
私は黙ってしまった。
弁明しなきゃ。わかってる。黙ったら、余計にこのウワサの信憑性が上がってしまう。言わなきゃ。違うって。私は自主練をしてるだけだって。
私は……
『あなたのしていることは、本当に聞くに堪えないことですか？』
『今私が聞いた限りで言えば、自慢するくらいでちょうどいいと思いますけど。』
一織くんの言葉がふと脳裏をよぎる。
私のしていることを、誰にも言っていなかった、1人で抱えていたことを…認めて、私の背負う重荷を軽くしてくれた、一織くんの言葉。
あの日の電車の中。早朝の電車の中。
･･････････････････････
「ただいま」
私はリビングに顔も出さず、階段を昇って自分の部屋へ直行する。
「あ、ちょっと！A！あんた駅着いたら連絡しなさいって言ってるのに今日しなかったでしょ！迎えに行けなかったじゃない！…ちょっと聞いてる？」
下からお母さんの声が聞こえるけど、答える元気が無い。
…あの後、黙り込んだ私に副部長は「ごめん」、とだけぽつりと告げて、ストレッチへ向かった。
「はぁ……」
私が、言わないのが悪い。ちゃんと、あのとき「違う、私は自主練をしてるんだ」って。
なんで、言えなかったの。一織くんにあそこまで勇気づけてもらって…
まだ、嫌われるのが怖いのかな。
『自慢だって、ウワサされるのかな。』あの時、弁明しようとした時、一瞬にしてそんなことが思い浮かんで、グッと言葉を詰まらせてしまった。
＿＿＿＿一織くんなら、きっと言えた。
チカンの男にさえ屈せず挑発を浴びせ、出会ってまもない私の行動を誇っていいものだと堂々と言い切り、番組を見る限り、先輩アイドルに敬意は持ちながらも自分の意見を怖がらずに言える。
そんな、一織くんなら。
ああ、だめだ。気づいてしまった。
私、また一織くんに助けを求めてる。
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なたね(プロフ) - 八神ちゃんさん» 八神ちゃんさん初めまして！コメントありがとうございます！部長さんなのですね！いやいや、その役職に着いていらっしゃるだけで本当に尊敬しますよ…！無意識にですか！お言葉とても光栄です！楽しんで頂けて嬉しいです！これからもどうぞこの話にお付き合い下さいね♪ (2021年2月2日 21時) (
レス) id: 1ba5a28d82 (このIDを非表示/違反報告)
八神ちゃん(プロフ) - 私も和泉ちゃんと同じで吹奏楽部の部長をやってて、それで下手くそなので()ちょっと悩んでたんです汗30問目を読み終わったあと無意識に「一織くんかっこよ!?!?!?」と口に出していました笑めっちゃ好きですｯｯｯｯ!!!!! (2021年2月2日 19時) (レス) id: 5b201646de (このIDを非表示/違反報告)
なたね(プロフ) - りりぃさん» りりぃさん、はじめまして！コメントありがとうございます！話を気に入ってて頂けて本当に嬉しいです…！応援、とても励まされます！これからも楽しんで頂けるように更新を続けていきますので、よろしくお願い致します！ (2021年1月30日 23時) (レス) id: 1ba5a28d82 (このIDを非表示/違反報告)
りりぃ - もうこの話大好きです笑応援してます！ (2021年1月30日 22時) (レス) id: 52f6335d50 (このIDを非表示/違反報告)
なたね(プロフ) - itsukiさん» itsukiさん、初めまして！コメントありがとうございます！私ですか？ありがとうございます！笑 一織くん、いいですよね…！気持ちが共有出来て嬉しいです！これからもこのお話にお付き合い頂けると嬉しいです！ (2021年1月26日 23時) (レス) id: 1ba5a28d82 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なたね | 作成日時：2021年1月19日 3時
