第19問 ページ19
「…あんまりじろじろ見ないでください。」
「えっ!私そんな見てた!?ごめんごめん!」
一織くんの含みのある表情の裏側を読み取ろうとしすぎて、どうやらじっと見てしまっていたらしい。
しまった、恥ずかしい…
「私は、図書室を利用します。日々の遅れを取り戻さないといけないので。」
はっ、そうだった。その話をしてたんだった。
「そうなんだ…!偉いね、一織くん。」
「当然のことですよ。」
一織くんはまたうつむいてしまう。
でも、私は"違う"と思う。
すごいよ、本当にすごいよ。だけどね…それは、当然のことじゃないよ。
「…そうかなぁ?毎日仕事で忙しいのに、授業の穴を埋めるためにこんな早く起きて自習するなんて、当然のようにできることじゃないよ。」
床に向いていた一織くんの視線が動く。私の視線と彼の視線が重なる。
「一織くんはすごいよ。これは誰にでもできることじゃないと思うよ!だから…」
ガタン!!
「うわっ!」
電車が線路の分岐点を通り、大きく揺れる。
その拍子に、私は一織くんの胸に寄りかかってしまった。
……えっ…?うそどうしよう、まず謝って…それから…
頭がぐるぐるして機能しない。状況を理解した瞬間に心拍数が跳ね上がって、耳がじわりと熱くなる。
「和泉さん、大丈夫ですか?」
一織くんの胸、広い。全く筋肉質に見えないそのいでたちからは想像もつかないほどしっかりとしたそれが、私をなんなく受け止めている。
…いや、そんなこと考えてる場合じゃないだろ!
「ご、ごめん!本当にごめん!」
私は慌てて一織くんから離れた。
「いえ、問題ないです。それにしても、だいぶ揺れましたね…」
うう、ドギマギしてるのは私だけだあ。
「確か、この後にも2回ほど大きな揺れがあるはず…。…和泉さん。」
「…っはい!」
異性と触れ合うどころか異性の友達もいなかった私の心臓はまだ全く落ち着いておらず、一織くんの呼び掛けにおかしな反応をしてしまう。
「こちらに来た方がいいんじゃないですか。」
そういって一織くんは彼がいた、座席とドアの間の角の隙間の空間を開ける。
「えっ。いい、の…?」
「ちゃんと手すりにつかまっててくださいよ。」
言われるがままに移動すると、一織くんは当たり前のように私の前に立った。
なんか、守られてるみたい、な……
これはずるいでしょ…一織くん。
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なたね(プロフ) - 八神ちゃんさん» 八神ちゃんさん初めまして!コメントありがとうございます!部長さんなのですね!いやいや、その役職に着いていらっしゃるだけで本当に尊敬しますよ…!無意識にですか!お言葉とても光栄です!楽しんで頂けて嬉しいです!これからもどうぞこの話にお付き合い下さいね♪ (2021年2月2日 21時) (レス) id: 1ba5a28d82 (このIDを非表示/違反報告)
八神ちゃん(プロフ) - 私も和泉ちゃんと同じで吹奏楽部の部長をやってて、それで下手くそなので()ちょっと悩んでたんです汗30問目を読み終わったあと無意識に「一織くんかっこよ!?!?!?」と口に出していました笑めっちゃ好きですッッッッ!!!!! (2021年2月2日 19時) (レス) id: 5b201646de (このIDを非表示/違反報告)
なたね(プロフ) - りりぃさん» りりぃさん、はじめまして!コメントありがとうございます!話を気に入ってて頂けて本当に嬉しいです…!応援、とても励まされます!これからも楽しんで頂けるように更新を続けていきますので、よろしくお願い致します! (2021年1月30日 23時) (レス) id: 1ba5a28d82 (このIDを非表示/違反報告)
りりぃ - もうこの話大好きです笑応援してます! (2021年1月30日 22時) (レス) id: 52f6335d50 (このIDを非表示/違反報告)
なたね(プロフ) - itsukiさん» itsukiさん、初めまして!コメントありがとうございます!私ですか?ありがとうございます!笑 一織くん、いいですよね…!気持ちが共有出来て嬉しいです!これからもこのお話にお付き合い頂けると嬉しいです! (2021年1月26日 23時) (レス) id: 1ba5a28d82 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なたね | 作成日時:2021年1月19日 3時