夜更け捌き人形 (ページ35)

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「その前に！演技というのはもっと魂を込めなくては。さっきの立原殿の演技では事の重大さが伝わらないでしょう」

「それもそうだな」

中原は妙に納得する。

「ええ？アドリブですよ、勘弁してくださいよ」

そもそもアドリブで台本を作ろうとする中也さんがどうかしているのでは、と立原は思ったが、怒られそうなので口に出すのは辞めておいた。

「どうかね？桃華ちゃんの試行の作戦は」

「済みません首領、ちっとも進んでおりません」

森に聞かれ、少しギクッとしながら中原は答える。

梶井や立原に協力して貰ったのは良いが、台本が書けたのはまだ4行だ。

梶井に振り回され、そうでなくても仕事が山積みの中原は疲れていた。

彼奴等、梶井と立原に任せるか、とも思い始めていたのだ。

「絶対に発見されない犯罪というものは不可能でしょうか。僕はずいぶん可能性があると思うのですがね」

それに加え、エリス嬢が可笑しな口調で話し始めるのを聞いたのだ。

「とても蘇生の見込みはありませんよ。早く警察へ知らせなきゃ。僕、公衆電話まで行ってきましょう」

かと思えば、桃華は「公衆電話」と言って医務室を指差した。

少女二人が「僕」と？医務室に公衆電話が？

とうとう幻聴が聞こえ始めた、と中原は苦笑。

「はああ、やっぱり名探偵は良いわあ」

「分かります」

満足そうなエリス嬢に桃華。二人が探偵のごっこ遊びをしていたなんて、中原は知らなかったのだ。