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貰った携帯が鳴り、エリス孃に教えて貰いながら操作すると、桃華は電話に出ることが出来た。

「お早う、桃華ちゃん。朝早くで悪いのだが来てくれないか。今、大変な事になっているんだ。マフィアで捕らえていた殺人犯が逃げてだね、まだ近くにいるはずなんだ」

「お早う御座います、分かりました」

「貸してちょうだい」

『大変な事』の程度が大きすぎて不安ながらも、桃華は急いで出社することになった。

電話の切り方を教えてもらうため、前に居るエリス孃に走りながら話し掛けようとすると、スマホを渡すように頼まれる。

「リンタロウ、エリスよ。リンタロウが買ってきたのってただの草じゃないの。もう怒ったからね!」

スマホを耳に当ててそれだけ言うと、エリス孃はすぐにスマホを返した。

走っているせいで雑音が多く耳が痛い。しかし雑音の中でも、首領が叫んだ声ははっきりと桃華の胸に落ちていった。

「いいね、桃華ちゃん、絶対に犯人と出会っても話してはいけない。エリスちゃんを良く見ていてくれ。少しでも様子が可笑しくなったら、直ぐに離れるんだ。そして犯人の特徴は−、」

桃華は力が抜けたような気がした。

首領の言う犯人の特徴は、朝話した人と完全に一致していたからだ。



さっきまで怒っていたエリス孃が口を半開きにし、目を開いたまま倒れている。

『大変な事』過ぎるのだ。桃華は一時間前、殺人犯に会ってしまっていた。

「お前は朝の…!」

殺人犯は桃華を見て目を細め、人質はばっと鞄を殺人犯に渡す。

首領がロープではなくリボンが体に巻き付いている姿に、黒蜥蜴は妙な格好で天井から吊るされている姿にぎょっとして桃華は後退った。

普段は建物の見張りをして居る構成員達はすでにエリス孃と同じように倒れている。

「お主、目的は?」

笑いながら尋ねる尾崎を殺人犯は突き飛ばした。

「俺がマフィアを恨んでいないとでも?」

「無駄な事を。マフィアを恨んでおるのなら何故真っ先に鴎外殿を殺そうとしない?」

「酒に酔い、洋服棚のリボンに絡まったので倒すまでもないかと」

「ポンコツめ−!許さぬ」

尾崎と殺人犯が会話している。

しかも尾崎は殺人犯ではなく、首領にナイフを突きつけている。

桃華は慌て、集中して辺りを見渡した。

三十代女性らしき人質はマフィアの死体処理員との事だが、桃華は会ったことが無かった。

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作者名:とおゆち x他1人 | 作成日時:2023年4月22日 22時

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