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第2話 ページ23

「桃華さん、だったね?此方に来なさい」

黒蜥蜴の一員である広津が、雑巾を掛けている桃華を呼んだ。

立ち上がり言われるがままについていった先は、この前に忌部を殺した、破損している部屋。

忌部の死体が消え、血の処理がされただけであり、特別な修復はされていない。

「直してくれ給え。君の力のことは、首領から聞いている」

私が異能力者?まだ実感を感じないながらも、桃華は床に落ちていた絵画の一部を摘みあげる。

絵画は元通りに壁に掛かり、ぐちゃぐちゃになっていた不思議な絵が姿を表した。

「ほう、ありがたい」

広津は頷き、煙草を吹かしている。

思わず声を出してしまいそうな痛みに桃華は思わず指先を見た。人差し指の腹が切れて居る。

これも捌き人形病の症状の一部なのだろうか。

公園で絆創膏を貼ろうと女の子の膝を触ったときに膝が切れた。

エリス嬢も芥川も、桃華が怪我を治す代わりに自分が怪我をした。

「『捌き人形病』は保守系の異能者に多いんだ。症状は人によって様々だが、彼らには共通点がある。異能を使い過ぎると−、死ぬんだ」

首領に告げられた時、桃華はは覚悟を決めた。

どうせ死ぬなら人の役に立ってから死んだほうが良いだろうから。

自分の命なんて惜しまない、と。

高そうな彫刻、穴の空いた壁。私が手を触れて直していく。

「御苦労だったね、桃華さん」

広津が私の肩に指を置き、私の体は後ろに弾き飛んで扉に勢い良くぶつかる。

桃華の太腿を広津さんは透かさず蹴り、立ち上がるのには失敗した。

手を使わずに立とうとしたせいだ。

しかし床に手を付けば今度は手首を蹴られ、壊れた扉に頭を打った。

「何、をっ…?」

広津さんと目を合わせようと上を向いたのに目は合わず。

「マフィアを抜けたくなったか?」

桃華が首を振ると、広津は目を合わせ謝った。

「悪かったねえ。貴方の度胸を確かめさせて貰ったよ」

そこでやっと自分の為だったことに桃華は気がつく。

「有り難う御座いました」

「ええ」

桃華が擦り剥いている太腿に触ると、自分には効かない異能なんだと実感させられた。

異能を使い過ぎた代償の心配をする暇も無く、遣ってきたのは身体の痛みと頭痛。

「あ、少女、良いところに。買い出し行ってきてくれねぇか?折り紙と鼻紙だ」

素直に頷き引き受ける桃華を、立原は引き止めた。

.→←. +作者語り


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作者名:とおゆち x他1人 | 作成日時:2023年4月22日 22時

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