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「獣に攻撃は効きます。効かないのは本体の方です」
子供にたった今吹き込まれたのか、谷田は銃を僕の腹部にぴたりと当てそっと話す。
本体の忌部を攻撃すれば、獣の力によって攻撃が跳ね返されて自分に返ってくる。
獣には攻撃が効かないのではなく、そう見えるだけ。獣が攻撃されると忌部の寿命が削られていく。
忌部を殺すには獣を殺す必要がある。
「今になってか」
今更指示など遅い。迫る獣を確認し、僕は呆れ顔で子供を見る。
だが理解した。徹底的に攻撃しないといけないのは獣。
「ならばっ、貴様を殺すのみだ」
子供と会ったあの日から経過したのは、半年と3週間。約束を守るため、鏡花役をさせるため、首領の命令故拾った子供。
「お前は玩具だ。道具だ」
子供に言い、前へ跳躍した。
ー羅生門 アギト
たちまち凶暴化する自分の衣服。
蛇のごとくうねり、獅子のごとく口を開けて羅生門は、獣に突っ込んでいく。空中を走る獣の腹を裂く寸前、忌部が獣を押しのけた。
バランスを崩した忌部は、獣の下敷きとなる。
「詩的天泣だ、今すぐ動け」
シテキテンキュウ。
言葉を乱暴に告げ、忌部は僕の目の前を通過した。
指示を出された獣は、僕の足元を駆ける。此奴を殺せば良いのだと、瞬時に把握。
しかし、足元に注意を引きつけられ過ぎた。
「危ねぇ!」
僕を庇おうとした立原は狙いを外し、忌部のつま先に銃弾がかする。
「くそっ」
右足の親指が靴ごと切れ、跳ね返ってきた残弾に倒れる立原。
「立原、手当てするから」
銀が腕を掴むも、軽く振り払い、立原は片足で飛んだ。
そして、もう何が正解かは分からず、机の上に積んであった空の段ボールを掴み、獣に投げつけた。
何度も見えない痛手を受けてきた獣は消滅し、無傷のように見える忌部は、泡を吹いて動かなくなった。
靄となった獣をすり抜け、物凄い速さで一直線に進む段ボールは、ある人の眼球を掠めていった。
「危ねぇっ!手前ら、何やってんだ!ぶっ飛ばすぞっ!」
死んだ獣を起こすのでは、と思うほど、中也さんの怒鳴り声が空気を振動させた。
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作者名:とおゆち x他1人 | 作成日時:2023年4月22日 22時