第十一章『Alice in the Garden《スノーリリイ》』【4】 ページ32
サァァと夜風が庭に吹き始めた時、真昼達と別れた御園は自分の部屋がある西館に戻ることはせず、合流するための手立てを得る為にある場所を目指して歩き出していた。
<御園、どこへ行くんです?>
するとやはり離れることなく、ついてきた蝶が後ろから尋ねかけてくる。
「裏門の鍵を探しに行く」
それに対して御園は逸る気持ちから簡潔にそう答えたのだが―――――。
<裏門・・・?>
訝しむ様に蝶が呟いた事から、ここで足止めをされてしまっては、他の者にまで見つかってしまう可能性が出て来てしまう。
すぐさまその考えに至った御園は眉を顰めると、
「昔・・・御国がよく裏門から抜け出していたのを思い出したんだ。御国の部屋に鍵があれば僕も城田と瑠璃達に合流できる」
改めて行動理由を明確にした上で、ついてくるなら静かにしろと、蝶に釘をさしてから、急ぎ足で御国の部屋がある東館を目指して歩いて行ったのだが―――――。
「なんだ・・・こっちは草がすごいな」
東館側の路は同じ敷地内にあるのにも拘らず、雑草が伸び放題となっていて、歩調を弛めながらさくさくと踏みしめつつ、歩いて行かなければならない状態となっていた。
―――――御国がいなくなってから誰も
―――――・・・僕自身もあれ以来、初めて来るような気が・・・。
戸惑う御園の心に共鳴するかのように、周囲の木々がざわ・・・と揺れ動く。
―――――どうして御国の話は
―――――確かに御国はこの家にいたのに。
―――――どうしてみんなでいなかったことにしてしまったんだ?
ざっざっざっと、気づけば御園は足元に絡みつく草を勢いよく踏みしめるようにしながら、また足早に東館に向かって足を進めていた。
第十一章『Alice in the Garden《スノーリリイ》』【4】→←第十一章『Alice in the Garden《スノーリリイ》』【3】
74人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:朱臣繭子 | 作成日時:2019年8月7日 23時