第十一章『Alice in the Garden《スノーリリイ》』【2】 ページ17
「そういや、お嬢さんとはアホ毛を介して顔見知りにはなったけど。二人には名刺すら渡してなかったすね。じゃ、名刺あげるから帰って貰う感じで・・・」
「えぇっ・・・ちょ・・・それは・・・」
眉根を寄せながら瑠璃と洞堂のやり取りを見ていた真昼はどうしてそうなるのかと顔を引きつらせながら呻く。
その時、先に洞堂から名刺を受け取った鉄が何気なくそれを裏返した矢先―――――
―――――ドッ
背負っていた棺桶を洞堂に目掛けて振り下ろしたのだ。
「―――――鉄君!?」
「ちょっ・・・鉄!? 何して・・・」
寸での処で洞堂は身体を右に向かって捻ったおかげで無事だったものの、鉄は一体何を考えているのか。
瑠璃と真昼がギョッとしながら鉄を見遣ると、
「おい、あのチビに会わせろ。早くしねーとこの庭に温泉掘るぞ」
そんな脅しを洞堂に対して鉄は口にしたのだ。
その脅し文句は鉄らしいと云えばそれまでなのだが―――――何故、そんな行動に鉄が出たのか。
「真昼、瑠璃。名刺の裏・・・」
その行動の理由を報せてきたのは真昼の肩に乗っていた黒猫だった。
そして真昼が黒猫の言葉に「え?」と目を瞬かせ、洞堂から受け取った名刺を裏返してみると。
―――――もっと強引にアピールして―――――
そこにはそんな走り書きされたメッセージが在り。
「「・・・!!」」
真昼と瑠璃が事情を理解した処で、
「・・・ちょ―――――・・・だーれか―――――・・・見てるんしょー? 帰ってくれそうにないすわ―――――・・・」
降参だと両手を上げた状態で塀に背を預けた体制のまま、門の向こう側の木々の中に在る防犯カメラを見上げながら洞堂が訴えるように言うと。
ジ―――――・・・と音を鳴らしながら、防犯カメラのレンズが角度を変えるのと同時に、ギィ・・・と有栖院邸の門もまた開かれたのだ。
「・・・どぞー。しょーがないから入っていいみたいす」
その言葉とともに、敷地の中に先導する形で踵を返した洞堂は、
「回りくどいことさせて申し訳ないすわ」
ぼそ・・・と小声で謝罪を口にした。
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作者名:朱臣繭子 | 作成日時:2019年8月7日 23時