第八章『修行と思惑』【2】 ページ25
けれど―――――
「あくまでも城田真昼と瑪瑙瑠璃にじゃがな!」
あやつは嫌じゃ!! と煙管でビッと御国を指しながらヒューが言うと、それに対して御国もまた舌を突き出してきたのだ。
ほんの少し前のやり取りでは殺伐とした空気を互いに醸し出していたのにも拘わらず、いまはまるで子供同士のケンカのようだと真昼と瑠璃が苦笑を浮かべると。
「鉄! お主の才能を見せてやるがいい!」
その最中、話に加わることがなかった主人である鉄に向かってヒューが呼び掛けると、
「・・・いいのかよ、人前ではやるなって言うくせに」
「時と場合じゃ。力を見せ合うことは信頼の証じゃよ」
微かに眉を顰めた鉄にヒューは頷きながら告げる。
「・・・へぇ」
それに対して短く声を洩らした鉄が一体何をするのだろうかと、真昼とクロと瑠璃が視線をそちらに向けた直後、信じられない光景を目にする事となる。
棺桶に右手を添えながら立っていた鉄の鍛え上げられた腕の筋肉がビキッとさらに盛り上がり―――――その次の瞬間、棺桶を抱えた状態で鉄は空中に向かって勢いよく跳躍すると、そこで体の向きだけを逆にしながら方向転換を行い、ジェジェ目掛けて空中からの奇襲を仕掛けたのだ。
「ヒューはいつもいいこと言うぜ」
そして鉄がそう呟くと同時に、
―――――ドオ・・・ン
激しい暴風が巻き起こり。
目を開けていることが出来ない状況下に陥った時、咄嗟にクロが右腕に真昼を、左腕に瑠璃を抱えて「あっぶね」と冷や汗を流しつつ、その場から後ろに向かって跳び退いた処で。
「・・・・・・なんだこれ?」
ふと、クロは自分たちの前に防御シールドのようなモノが張られている事に気づき目を瞠る。
その時、瑠璃が首から下げている『鍵』もまた淡い光を瞬かせていた。
そして―――――
「・・・なっ、すご・・・い」
「何が・・・・・・どうなったの・・・・・・?」
真昼と瑠璃が呻くように声を洩らし、薄っすらと目を開けると、防御シールドはフッと消失したのだ。
「瑠璃、いまお前の『鍵』が・・・・・・」
クロはそう言い掛けたのだが、その時、バササッとジェジェが被っていた紙袋三個が勢いよく空に向かって吹き飛ばされていったことにより。
真昼と瑠璃の意識はそちらに向けられていた為、クロは口をつぐんでしまう。
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マユ(プロフ) - 月雪桜@ペンタブ欲しいさん» ご閲覧下さいまして此方こそ有難う御座います。読んで下さる方に少しでもお気に召して頂けるものを目指して書いているので頂けたこのコメントは身が打ち震える程嬉しいものです!これからもご期待に添えられるよう頑張って執筆致しますのでどうぞ宜しくお願い致します! (2019年6月16日 20時) (レス) id: 6997652f0b (このIDを非表示/違反報告)
月雪桜@ペンタブ欲しい(プロフ) - 久しぶりに閲覧してみたら7まで進んでいて驚きました!キャラはほとんど大好きですが、特に好きな鉄がマユさんの素晴らしい文才でより一層素敵に表されていて感動です!読むたびとても綺麗な文で楽しませてもらっています!大変だとは思いますが更新応援しております! (2019年6月16日 14時) (レス) id: ce15bcb2de (このIDを非表示/違反報告)
マユ(プロフ) - 中村千尋さん» お待たせしてしまっている状態で申し訳ありません。執筆に取り組む時間と気持ちの余裕がなかなか取れず・・・。ですが、今月中には何話か更新出来るよう、いま全力で取り組んでいますので、もう少しだけお待ち頂けましたら幸いに思います。 (2019年5月20日 23時) (レス) id: 6997652f0b (このIDを非表示/違反報告)
中村千尋(プロフ) - 更新頑張って下さい!!とても続きが気になります (2019年5月20日 22時) (レス) id: a991a170a0 (このIDを非表示/違反報告)
マユ(プロフ) - カナリアさん» とても嬉しいコメント有難う御座います。ご期待に少しでも添えられるよう、頑張って書き進めていきます。更新は不定期となってしまいますが、どうぞこれからも宜しくお願い致します。 (2019年3月5日 21時) (レス) id: 6997652f0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朱臣繭子 | 作成日時:2019年3月1日 23時