第四章『願いと選択』【1】 ページ43
「―――――真昼、フロあがったぞ」
自身の胸の内に想いを巡らせていた真昼の意識を、ふいに引き戻したのは、入浴を終え、濡れた髪を大雑把にタオルで拭き、それを頭に乗せたままリビングに顔を覗かせたスリーピーアッシュだった。
「・・・あぁ。クロ、瑠璃姉、寝ちゃったから静かにしてろよ」
冷凍庫からお風呂上がりのカップアイスを取り出すと、それを手にこちらにやってきたスリーピーアッシュに、コミュニティサイトの閲覧を終了させた真昼は声のトーンを僅かに下げながら言う。
「・・・そうか」
アイスの蓋を開けて、中身を匙で軽く掬うと一口食べたスリーピーアッシュの真紅の瞳が眠る瑠璃の姿を捉える。
と―――――ちょうど一人、座れるスペースが残っていた瑠璃の傍らに、腰を下ろしたのだが。しかし、スリーピーアッシュの顔には僅かながら不満そうな表情が浮かんでいた。
その理由は、いま食べているアイスが、スリーピーアッシュが好きな『クッキー&クリーム』ではなく、シンプル推奨派の真昼が選んだ『バニラ』だからなのか。
それとも―――――真昼の肩に瑠璃が頭を預けた状態で眠っているからなのか。
「あと、そうだ。定例会の日付、来週の26日―――――時間は19時からやることに決まったってリリイからメッセージが届いたからな」
すっかりいつも通りの顔に戻った真昼は、スリーピーアッシュの様子に眉を顰めつつも、あえて何が気に入らないのか触れる事はせず、コミュニティを閲覧していた時に来た連絡事項を口にする。
すると、アイスをまた一口食べたスリーピーアッシュは、チ・・・と小さく舌打ちをすると「リリイめ、ホントにやる気か・・・」と、めんどくさそうに顔を顰め、
「・・・これ以上、首突っこんでもめんどくせーことしかねーぞ。誰かがどうにかしてくれんの待っときゃいいんだ」
アイスのスプーンを咥えたまま、溜息交じりにスリーピーアッシュが洩らしたその言葉に、真昼は眉根を寄せると、それに対する自分の思いを口にする。
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作者名:朱臣繭子 | 作成日時:2017年5月22日 18時