第二十四章『艱難辛苦』【2】 ページ13
「・・・泰ちゃん!!」
唯一の絶対的存在であった塔間からの声が聴こえないままの状態に不安を覚えてしまったらしい吊戯が色を失った面持ちで塔間の名前を叫んで。
そんな吊戯の姿を目にして、レイは好機と判断したのだろう。
「ジル! 片手を貸して!」
呼びかけに「おっ?」と相棒が振り返ってきた処で。負傷していなかった左手の親指と人差し指をそれぞれ伸ばして構えて見せると。
「・・・なるほどなァ!!」
レイが何をしようとしているのか、その意図を察したジルもまた、左手の親指と人差し指を伸ばしながら、協力して四角い枠を作り。吊戯の姿を捉えて、バチンと動きを封じる技を発動させると。
「あっ・・・」
呆然とした面持ちで声を漏らした吊戯に向かって。
「さアァ、兄ちゃん!! これで最期だ、イイ表情しろよオォ!?」
ニヤリと笑みを浮かべたジルがそう言いながら右手を突き出すと、指先から水撃を繰り出していって。
「吊戯さん・・・・・・っ!?」
瑠璃が吊戯に向かって叫んだその時―――――。
身動きが取れない状態となっていた吊戯はジルからの攻撃を避ける事は出来ず。
激しさを増した水撃によってエレベーターの扉に、ドと背中から叩き付けられてしまい。
さらに衝撃によって壊れてしまったエレベーターの扉が内側に向かって外れて。
「あ・・・」
しかし、エレベーターの箱はそこには無く、吊戯の身体は落下し始めて。
呆然となりながら、咄嗟に吊戯はエレベーターの扉があった場所の縁に右手を伸ばして掴まろうとするも。ドパとさらに水流が襲い掛かってきて。
―――――あ・・・やばい。
―――――落ちる・・・し。
―――――水、沈・・・・・・。
大量の水が溢れた地下の暗闇の中に吊戯の身体は為す術なく。
―――――ドポォンと落下してしまったのだ。
※占ツク転記/22/07/09
【本館/22・07/09/別館/22・07/09掲載】
朱臣繭子
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マユ(プロフ) - yuiさん» 初めまして。兄弟戦争編を読んで下さっている方から。最新作の此方にコメントを送って頂けるなんて。私もまた歓喜に打ち震える想いです。お話を書かれる方が減ってしまった為。自給自足の日々ですが・・・これからも頂けたお言葉を励みに頑張ります!有難う御座います! (2022年9月18日 18時) (レス) id: f50f5d2051 (このIDを非表示/違反報告)
yui(プロフ) - まだこの章まで行ってませんが(なんならまだ9章)こんなに長く作成してくれてとても嬉しいです。コレからも頑張ってください (2022年9月18日 16時) (レス) id: b7d6eb1800 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朱臣繭子 | 作成日時:2022年7月9日 2時