第二十二章『雲壌懸隔』【2】 ページ37
瑠璃が部屋の中に立ち入った際に浴室の灯りは点いていなかった筈なのだが。
いつの間にか、チカチカチカチカと―――――まるで『彼』の居場所を知らせるかのように―――――電灯が点滅を繰り返していて。
「・・・・・・吊戯さん、そこにいるんですか?」
洗面所のドアの前に向かい、呼び掛けてみたものの、水が流れる音が止むことはなく。
意を決して洗面所のドアを開くと―――――浴室の扉もまた半開きの状態になっていて。
ドクンっと鼓動が跳ねるのと同時に、冷や汗が頬を滑り落ちていく。
そうして浴室の中を恐る恐る覗いた瑠璃の目に飛び込んできたのは―――――
ザ―――――、ザ―――――、ザ―――――と勢いよく水を放出させている床に投げ出されたシャワーヘッドと。空っぽの浴槽の中に傷だらけの上半身を丸めて眠っている吊戯の姿だった。
「・・・・・・っ」
その吊戯の姿を目にした瑠璃は唖然となりながらも。ゆっくりと蛇口に手を伸ばし、キュッと捻って流れていたシャワーの水を止めると。
パチと一瞬、浴室の中がまた暗くなり―――――水の音が聴こえなくなったからなのだろうか。
「ん・・・」と吊戯が小さく声を漏らしながら目を覚まして。
「あれ、瑠璃ちゃん?」
「あっ・・・・・・ごめんなさい吊戯さん。その、起こしてしまって。あと、勝手に入って来ちゃって・・・・・・」
チカチカチカチカと点滅する灯りの中で、不思議そうに目を瞬かせながら、起き上がった吊戯に対し、慌てて瑠璃が謝罪をすると。
「ああ、いーよ。いーよ。オレいつも鍵かけてないんだ」
だから出入り自由だよと、ヘラリと吊戯は笑みを返してきて。
「でも瑠璃ちゃんが、わざわざオレを訪ねてくるなんて。どうかしたのかな?」
「えと、真昼君達の部屋の浴室の電気が切れていて・・・・・・」
変わらぬ態度で話しかけてくる吊戯に対し、瑠璃は訪問の理由を口にすると。
「ああ、アレ接触悪いんだよねぇ。オレんちのも切れかかってるけど―――――」
そう言いながら浴槽の縁に手を置いて立ち上がった後に、此方側に出てきた吊戯に対し、
「あの、吊戯さん・・・・・・どうしてこんな処で寝てたんですか?」
瑠璃は戸惑いの面持ちになりながらも尋ねかけてみると。
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マユ(プロフ) - のりさん» 数ある物語の中で目に留めて頂けただけでなく。そのようなお言葉を頂けるなんて!私も思わず狂喜乱舞してしまう程嬉しいです!原作とキャラのイメージを崩すことなく、夢主とのやり取りを今後も楽しんで頂けるよう頑張ります! (2021年7月6日 22時) (レス) id: f50f5d2051 (このIDを非表示/違反報告)
のり - 先日最近こちらの作品を見つけました。大事にゆっくり読もうと思っていたのに、つい一気に読んでしまいました!特にキャラクターと夢主達のやり取りがかわいくてニヤニヤしてしまってます…^-^サーヴァンプの夢小説が読めて心から嬉しいです…!! (2021年7月6日 18時) (レス) id: 19bc179a44 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朱臣繭子 | 作成日時:2021年6月29日 22時