第二十一章『千錯万綜』【2】 ページ45
箒や杖ではなく―――――長銃や短銃。そして長棒に短棒など。『魔法の道具』というよりも、これは『武器』という言葉のほうがしっくりくるのではないだろうか。
瑠璃はストレッチだけでへばってしまったクロの様子を気にしつつ、イズナに聞いてみる。
「これ全部イズナちゃん達が作ったの?」
「そう! 私達、開発班が作ってるの」
そしてイズナが楽しげな様子で瑠璃に頷くと。
「ね―――――これはどう使うんだい?」
短棒を手にした吊戯がイズナに使用方法を聞こうとした瞬間―――――パキパキパキと音を立てながら道具の形状が変化し始めて。
「お?」と目を瞬かせた吊戯の手の中で、短銃に変わった武器に気づいたイズナが「あっ、それは・・・」と道具の説明をしようとしたものの。
その直後、短銃の先端からバシュと光線が照射されて。
「クロっ!?」
思わぬ出来事に、ハッと瑠璃がなった時には、間に合わず。
「に゛ゃ―――――?!」
「クロ―――――っ!?」
クロの悲鳴に次いで真昼もまた、愕然と声を上げたものの。
クロの身体に一切の外傷はなく―――――しかし、人型から黒猫の姿にどうやら強制的に変身させられてしまったようで。
「にゃ・・・」
ころ―――――んと仰向けの態勢になった黒猫が放心状態で床に転がっていたのだ。
呆然と目を瞠りながら瑠璃がイズナに尋ねる。
「イズナちゃん、吊戯さんが持っていたアレって・・・・・・」
「疑似太陽光を発射するレーザー銃!」
成功です! とキラキラと誇らしげな雰囲気を纏いながら、イズナは両手で黒猫を掲げる。
―――――そーか、吸血鬼相手だもんな・・・。
その様に真昼は苦笑いを浮かべてしまう。そして瑠璃はイズナから黒猫を受け取ると、
「びっくりしたけど、いきなりケガをするようなことにならなくて良かったわね」
ポンポンと労わるように背中を撫でると「に゛ゃ・・・」と黒猫が答えて。
その後に瑠璃の腕の中から地面に下りた処で人型に戻ると。
「人間はこえ―――――な・・・。向き合えね―――――」
クロは疲弊した面持ちのまま、床に座り込みながらそんなふうに漏らしたのだが。
あくまでもそれは比喩的なものだと真昼も瑠璃も分かっているので。その言葉に対しては何も言うことはしなかったものの。
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作者名:朱臣繭子 | 作成日時:2021年4月25日 2時