第二十一章『千錯万綜』【1】 ページ24
「はっは! なーんてね♥ キミ、見事に引っかかってくれたね!」
真昼のほうに目を向けた吊戯が右手の親指と人差し指を掲げながら、ていっ、と翻す仕草をした瞬間―――――
「うわっ!?」
クロの身体を拘束していた漆黒の楔の中の一本が真昼の右足首に絡みついてきて。
「真昼君!?」
足を掬われる状態に陥ったことによって、地面に尻餅をついてしまった真昼の傍に慌てて瑠璃が膝を突くと。
「それじゃあ、オレ忘れ物を取りに一度部屋に戻るから! 瑠璃ちゃんのことは拘束しないけど。ちゃんとおとなしく二人と一緒にそこで待っててね〜〜〜」
「ちょ、ちょっと・・・!」
笑みを浮かべた吊戯に真昼が抗議の声を上げるも、吊戯は足を止めることはなく。
そのまま自室のほうに向かって行ってしまったのだ。
一方、吊戯とのやり取りに辟易し、その場を後にした御国は居住空間のフロア内に置いて弟である御園ではなく。平静さを保ちきれなくなってしまったことから、吊戯に真昼達のことを任せて、先に立ち去ってしまった後輩である露木の姿を見付け出していた。
しかし、フロアの壁に両手をついて俯きながら立ち止まっていた露木に向かって「修平」と呼び掛けたものの返答はなく。
「おーい修平くん」
傍に近づいて行って、ひょこと横から顔を覗き込むようにしながら、再度声を掛けてみた結果。
「むこうへ行ってください・・・」
漸く露木の口から紡ぎ出された返答はそんな釣れないもので。やれやれという面持ちで御国は露木から離れて一歩前に立つと―――――
「・・・なあ修平。お前ももう子供じゃないんだから、そろそろ自分のスタンスはハッキリさせないとな?」
そこで露木に対して背を向けたまま、御国は右手を掲げる仕草をすると、先輩という立場から後輩に対して、言い含めるかのような口調で言った。
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作者名:朱臣繭子 | 作成日時:2021年4月25日 2時